Ado「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」

 8月6日に劇場公開されたアニメ映画『ONE PIECE FILM RED』の躍進が止まらない。尾田栄一郎原作の人気マンガの劇場版第15作となる同映画は、公開されるやいなや破竹の勢いを見せていたが、20日目となる8月25日についに興行収入100億円を突破した。

 アニメ化10周年・劇場版10作目となった2009年の『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』から始まった『ONE PIECE FILM』シリーズは、原作者自ら製作総指揮や総合プロデューサーとして作品に深く関わっていることもあり、いずれも興収48億円以上の大ヒットを記録している人気シリーズ。これまでの最高記録は2012年の『ONE PIECE FILM Z』による68.7億円だったが、『RED』は公開からたった10日で興収70億円を超えてシリーズ歴代最高記録を樹立と、圧倒的な勢いを見せていた。

 2022年に日本国内での興収が100億円を突破したのは、現時点で『RED』とトム・クルーズ主演作『トップガン マーヴェリック』の2作のみ。後者は5月27日公開、公開65日目となる7月30日に100億突破となっている。同じ「週刊少年ジャンプ」作品で比較しても、公開43日間で興収100億円を突破した『劇場版 呪術廻戦 0』(2021年)を上回るペースとなっており、『RED』の勢いの凄さが改めて浮きぼりになる。

 配給の東映にとっても、単独配給作品として初めて興収100億円を突破した記念すべき作品となった『RED』。

社会現象ともなりそうな勢いだが、すごいのは映画だけではない。音楽面でも新記録を数々打ち立てている。

 『RED』は、映画オリジナルキャラクターとして世界の歌姫「ウタ」というヒロインが登場し、物語のキーパーソンとなっていることもあり、本作はミュージカル的要素も強い。映画の音楽は中田ヤスタカが担当しており、ウタの歌唱パートをAdoが担っている。そしてこの映画のために中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、Vaundy、折坂悠太、秦基博ら7組がそれぞれ書き下ろしで楽曲提供しており、「ウタ」が劇中で披露するという趣向だ。

 中田ヤスタカ提供の主題歌「新時代」を含むこれらの楽曲はアルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』として8月10日にリリースされたのだが、これらが映画同様にヒットを記録しているのだ。

ビルボードジャパン、オリコンで「史上初」記録を次々と打ち立てる

 まず主題歌「新時代」。6月8日に配信で先行リリースされ、リリース直後からデジタルダウンロードやストリーミング再生数が好調で、ビルボードジャパンによる総合ソングチャートではトップ10を維持していたが、8月5日の映画公開を機に人気がさらに爆発。10日に公開されたビルボードジャパンチャートでは、ダウンロード指標で1位に返り咲き、ストリーミング指標でも2位となるなど急伸し、総合ソングチャートで3位と、これまでの最高順位を更新。その翌週には、なんと週間ストリーミング再生数が前週およそ818万回からおよそ1716万回とほぼ倍増する勢いを見せ、総合首位を手にした。その勢いは止まらず、24日発表のチャートでは、さらにストリーミング再生数はおよそ1874万回と伸び、2週連続で総合トップをキープしている。

 だが、驚くべきは、他の楽曲もチャートを席巻していることだ。

8月17日発表の総合ソングチャートでは、Vaundy提供の「逆光」が総合2位、Mrs. GREEN APPLE提供の「私は最強」が総合3位と、トップ3を独占。ビルボードジャパン史上初の快挙を成し遂げた。さらに「ウタカタララバイ」が総合5位に入り、トップ5内には4曲同時ランクイン。加えて他の3曲もトップ20入りしたほか、テレビアニメ版のキャラクターソングをボーナストラックとしてAdoが改めて歌唱した「ビンクスの酒」も総合40位に送りこみ、『ウタの歌』収録曲すべてがチャートインするという、『RED』旋風を巻き起こしている。

 8月24日発表の総合ソングチャートでも、2位の座こそKis-My-Ft2の新曲「Two as One」に奪われたものの、引き続きトップ5に「新時代」「逆光」「私は最強」「ウタカタララバイ」の4曲が並んだほか、前週13位だった「Tot Musica」が6位に、前週12位だった「風のゆくえ」が10位に上昇し、トップ10内に6曲が同時ランクイン。これもまた、ビルボードジャパン史上初の快挙となった。

 オリコンの週間デジタルランキングにおいても、デジタルシングル、デジタルアルバム、ストリーミングの3部門で首位を手にするという3冠を2週連続で達成。デジタルシングルランキングでは、「新時代」「風のゆくえ」「私は最強」「逆光」の4曲が2週連続でトップ4を独占し、オリコン史上初の快挙となっている。また8月24日発表のストリーミングランキングでは、「新時代」「私は最強」「逆光」「ウタカタララバイ」「Tot Musica」の5曲がトップ5を独占。そのうち上位4曲はいずれも週間再生数1000万回以上を記録しており、同一アーティストによるトップ5独占、および4曲同時週間再生数1000万回超えはいずれもオリコン史上初となっている。(1/2 P2はこちら

(2/2 P1はこちら

 この猛烈な勢いは本家ビルボードチャートにも波及。世界200を超える国・地域におけるデジタルダウンロードおよびストリーミング再生数で構成されグローバルチャートで、「新時代」(英題「New Genesis」)は、現地時間の8月22日に発表されたチャートで前週40位から20位まで上昇。

米国のデータを除外したグローバル・エクスクルーディングUSチャートでは前週18位から8位とトップ10入りを果たしている。

 このチャートにJ-POP曲がランクインした例では、社会現象を巻き起こした『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』の主題歌となったLiSAの「炎」がグローバル8位、エクスクルーディングUSで2位まで到達したのが過去最高だが、そのほかにグローバル・エクスクルーディングUSチャートでトップ10入りしたのはこれまでYOASOBI「夜に駆ける」(最高6位)のみだった。Ado「新時代」のすごさを客観視しやすい結果と言えるだろう(ちなみに「うっせぇわ」は最高16位)。

 そしてこの『ONE PIECE FILM RED』とのコラボレーションは、間違いなくAdoのキャリアの転機となりそうだ。

 Adoといえば「うっせぇわ」のイメージが強く、テレビ露出が限定的なこともあって、テレビ以外で最新の音楽に触れることのない層からはいまだに“一発屋”と誤解されているケースもまま見られるが、TeddyLoidが編曲に関わった「踊」は2021年のビルボードジャパン年間チャートで18位に入るヒットを記録しているし、昨年の『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)の主題歌となった「阿修羅ちゃん」も、自身4曲目となるストリーミング累計再生回数1億回を突破する人気を博した。だが、今回の「新時代」のヒットは格段に規模が大きい。

加えて、主題歌を担当する映画そのものが記録ずくめの特大ヒットとなっており、ビルボードジャパンのカラオケ人気指標では「うっせぇわ」以外で初めてトップ5入りしている点を見ても、新たな代表曲として世間一般にも広く認知されるだろうことは間違いない。

 さらに、Adoを支える制作陣の変化にも注目したい。今年1月に発表した1stアルバム『狂言』はすべての楽曲がボカロPとしても活動しているクリエイターからの提供曲で構成されていた。だが一転、『ウタの歌』では中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、Vaundy、折坂悠太、秦基博らと顔ぶれが変わった。これだけならこの映画のため、と解釈することもできるが、10月に公開される橋本環奈主演のホラー映画『カラダ探し』の主題歌「行方知れず」は、Adoが敬愛する椎名林檎が提供。Adoの制作チームが、彼女の活躍のフィールドを広げようとしているのは明らかだろう。この“新路線”が支持されるかはこれからの話だが、Adoの歌手としての天性の素質に加え、「新時代」を始めとした『ウタの歌』収録曲の人気を見るかぎり、大きな成功を納める可能性は高い。

 8月27日からは第3弾入場者プレゼント「『ONE PIECE』コミックス巻4/4 “UTA”」が全国300万部限定で配布されるなどの施策も続いているほか、28日にはフジテレビで興収100億円突破記念番組が関東ローカルで放送されるなど、まだまだ『RED』旋風が続きそうだが、Adoもこの勢いでさらなる飛躍を遂げ、キャリアの“新時代”へと突入することになりそうだ。

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日刊サイゾー2021.07.11