長澤まさみ

 夏ドラマが終了し、いよいよ秋ドラマが始まる季節となったが、最注目作品のひとつが、10月24日にフジテレビ系月10枠でスタートする『エルピス —希望、あるいは災い—』だろう。

 主演の長澤まさみにとって、『コンフィデンスマンJP』(同)以来、4年半ぶりの連続ドラマ出演となる『エルピス』は、映画『モテキ』『バクマン。

』のヒットで知られる大根仁監督が演出を務め、映画『ジョゼと虎と魚たち』や、NHK連続テレビ小説『カーネーション』などで知られる渡辺あやの脚本によるオリジナルドラマ。フランス・カンヌで開催される国際映像コンテンツ見本市「MIPCOM」で世界初上映される予定で、日本ドラマの世界初公開がメインホールで行われるのは今作が初ということでも注目を集めている。

 スキャンダルによって深夜の情報番組に異動させられた落ち目のアナウンサーが、死刑が確定した連続殺人事件について、番組で取り上げた際に疑問を抱くようになり、番組の若手ディレクターと共に冤罪疑惑を追及するというストーリー。スキャンダルでエースの座から転落した女子アナを長澤が、若手ディレクターを眞栄田郷敦が、報道局のエース記者を鈴木亮平が演じる。

「カンテレ制作ドラマは評価の高い作品も多く生んでいるが、視聴率面では2017年4月期の『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』以来、5年以上も2ケタ台作品が生まれておらず、昨年10月期からおよそ25年ぶりに月曜22時の枠に戻ったものの、競合番組が強いこともあり苦戦が続いている。しかし配信では好調な作品も増えていることから、『エルピス』は完全に世界市場を見据えた作品として力を入れているようです」(テレビ誌ライター)

 その意気込みは、“インティマシー・コーディネーター”が起用されたことからもわかる。

「性的なシーンを撮影する際、俳優の尊厳を守るため、俳優と制作側の間に入り、どういう演出にするか調整する専門家です。本人の意志に背いた撮影が起こらないよう、第三者が合意を確認するという意味があるのに加え、制作側と俳優の間に上下関係が生まれないようにする意味合いもあり、ハリウッドでは広く導入されていますが、日本にはまだ専門家が2人しかおらず、Netflixが主導で取り入れていってますね」(ドラマ・映画ライター)

 過去に大根監督の映画『モテキ』でディープキスやバスト揉みシーンなどを演じたことのある長澤だが、日本の地上波ドラマの現場も変わりつつあるということなのだろうか。と思いきや、フジテレビ側のしたたかな戦略がインティマシー・コーディネーターの導入に大きく影響したのだという。テレビ関係者がこう耳打ちする。

「劇中では、長澤演じる女子アナが週刊誌に路上キスを撮られるシーンがあるだけでなく、さらなる過激シーンも用意されているようです。地上波の放送時間はCMを除くと1話につき大体およそ40分ほどですが、60分ほどの“完全版”をFOD(フジテレビオンデマンド)で配信予定だそうで、そこでは、長澤扮する女子アナの転落の原因となる“リベンジポルノ”の様子が公開されるといいます。

地上波では難しい大胆なシーンも、配信ではそのハードルは大きく下がりますから、そのためのインティマシー・コーディネーター導入だったのでしょう。

 フジテレビといえば、Netflixとの共同企画・制作で不倫ドラマ『金魚妻』をつくり、主演の篠原涼子を始め、長谷川京子や松本若菜らが毎話のように激しい濡れ場を披露したことでも話題を呼び、Netflixグローバルトップ10で非英語シリーズの中で世界7位にランクインするなど反響がありました。また、その松本主演で、『金魚妻』と同じ原作者の漫画を実写化したドラマ『復讐の未亡人』は今春に先行配信後、この夏にド深夜ながら地上波で放送されましたが、松本の体当たりのセクシーシーンが各話のサムネイルに反映された結果、見逃し配信のTVerでは一部のゴールデン・プライム帯ドラマを超える再生回数を記録しています。いまや配信での成功こそテレビ局にとって重要な課題で、特に自社の有料サービスに誘導できるコンテンツをどれだけつくれるかを現場も問われています。FODはボーイズラブを中心に配信オリジナル作品を増やしており、地上波では一部カットして深夜帯に放送し、“フルで見たければFODへ”と誘導してきましたが、『エルピス』の成功次第ではゴールデン・プライム帯にも同様の流れが波及するかもしれませんね」

 視聴率以上に、FODがどれだけ登録者数を伸ばすのかに注目が集まりそうだ。

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