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 お笑い芸人の下積みには大きく3種類が存在する。

【1つ目エントリーライブ】

 お笑い芸人になるのはこの方法が1番早い。

3000円握ってお笑いライブにHPからエントリーすれば、舞台に出演する機会が与えられる。舞台に立ってしまえばお笑い芸人だ。誰でもネタさえ思いつけば今日から始められる。極端な話、無言でも3分間舞台にいれば別にいい。それがどれだけつまらなかろうが、関係ない。そもそも誰でも出演できるお笑いライブではお客さんはほとんどいることがない。
面白くても面白くなくても会場の空気はさほど変わらない。

【2つ目養成所】

 少し前まではお笑い養成所に誰しもが通い、お笑い芸人になるという流れがあった。というより他の方法がよく分からなかった時代すらある。お笑いライブに出演する手口が分からなく、今ほどどこにでも劇場があるわけでもなく、お笑いライブそのものが貴重で敷居が高かった。お笑いライブを見に行くと出演している芸人は所属事務所というものがあり、会社に入らなければ出演する機会を貰えていなかったようにも見えた。

 勿論フリーで成り上がっていた芸人はいたが、稀だった。

お笑い養成所は年間で40万円前後支払うと1年間レッスンが受けられる。そこから養成所で用意されたお笑いライブに出演する機会を与えられる。そこで評価を上げると出演する回数が多くもらえたりもする。養成所では多くの人が集まっているので、そこで評価が高いと上がっていくことが多いが卒業した途端、面食らう事になる場合もある。

【3つ目弟子】

 一昔前に芸人になるのは弟子になるしか選択肢がなかったような時代もある。現在では落語において弟子制度が引き継がれている。

「弟子とは理不尽に耐える事だ」と立川談志立川志の輔に言った言葉でもありますが、師匠を立て、逆らわず、気遣いという技術が養われていくものでもあった。昭和58年に落語協会から立川一門が脱退する事になったときも弟子は従うしかない。自力で場所を探し青物横丁で毎月落語会を開催していた。「やる場所がなかったら自分で探せ、客は自分で捕まえろ」という立川談志の言葉を弟子は信じてやるしかない。結果ジガタが強くなった芸人を輩出することになった。

 エントリーライブや養成所ではなかなか養う事が出来ない「理不尽に耐える事」。

時には間違っていても飲み込んで対応するというのも人間関係では大事な要素の1つだったりもする。可愛げが仕事を貰うことで非常に大事な要素となっているが、その部分を養う事については弟子制度が一番スキルの向上に良いとされているようにも感じる。

 やはりエントリーライブと養成所はネタが少し調子いいと偉そうになってしまったり尖ってしまったりするが、師匠がいるとどんなことをやったとしても「半人前が偉そうに」との一言で押さえつけられてしまう。ちょっとでも横にはみ出そうものなら師匠から叱責され改めなければならない。そして今学生芸人という大学のサークルでお笑いを始め、卒業後は就職しながら休日にお笑いをするという新たなる形が出来つつもある。視聴率低迷からテレビの単価が減り、プロだけで活動するのが難儀になった現代だからこその活動の仕方だが、本当にプロになるならばこの弟子というのも素晴らしい始め方だなと思う。

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立川談志が立川志の輔に言ったという「弟子とは理不尽に耐える事だ」の貴重な意味
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