ファッション界ではショッキング・ピンクが流行して久しいが、この夏、ピンクがさらに勢いづきそうだ。バービー人形のマテル社とタイアップしたコメディー映画「バービー」の劇場公開が7月21日、米国で始まる。
バービー人形のテーマカラーはピンクで、映画「バービー」もピンク一色だ。バービー人形のようにピンクでコーディネートする「バービーコア」というスタイルが世界に定着し、ピンクは奇抜な色というこれまでのイメージからの脱却が進む。
映画「バービー」は、マテル社の着せ替え人形バービーの実写版コメディー。完璧な人形になるために修行中のバービー人形が、人間の世界に飛び出して繰り広げる騒動を描いている。バービー役はマーゴット・ロビー、バービーの恋人のケン役をライアン・ゴズリンが演じる。
新型コロナ以降、映画各社は人々を映画館に呼び戻すために苦心しているが、映画「バービー」は、ピンクブームに乗る形で、公開前から徹底したマーケティング戦略で挑んだ。
カリフォルニア州での派手な衣装でのロケの様子がメディアで報じられ、「バービーコア」と共にソーシャルメディアやファッションメディアのネタになったのは、公開の1年も前のことだった。
グーグル検索で映画「バービー」を調べようとキーワードを打ち込むと、星のマークが現れ、その後、画面全体がピンクになるという仕掛けまで登場した。
興行収入測定や視聴率分析などを行う米国の企業、コムスコアのシニアアナリスト、ポール・ダーガラベディアン氏は、米国の公共放送、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の取材に対し、映画「バービー」の取り組みは「映画を完璧にマーケティングするためのテストケースだ」と指摘している。
長期間のPR作戦のかいもあり、興行収入面での前評判は高い。
7月21日には映画界の巨匠、クリストファー・ノーラン監督の新作「オッペンハイマー」も公開される。こちらは原爆製造に携わった物理学者、ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた超硬派な作品。話題作のガチンコ公開とあって、米国メディアには「どちらから見るべきか」を勝手に分析する記事が踊り、映画ファンは真面目に読み入っている。
映画「バービー」の話題性にも支えられてファッション界のヒットカラーの道をひた走るピンクだが、もはや一過性のトレンドではなく、常時、ファッションの中に取り込まれる色になった。
ピンクは自然界にはあまり存在しない色だったため、名前としてピンクという言葉が使われ始めたのは17世紀以降になってからだ。
女性的な色だと考えられているが、19世紀は必ずしもそうではなかった。軍服に淡い赤が使われていたことから、男性が着用する色といわれた。
1930年代にイタリアのファッション・デザイナー、エルサ・スキャパレッリが「ショッキング・ピンク」と名付けた自身の色彩を発表し、世界に衝撃を与えた。
ピンクが女性に色として定着したのは1950年代だ。ドワイト・アイゼンハワー第34代米国大統領の夫人であるマミー・アイゼンハワーが、1953年の大統領就任式でピンクのロングドレスを着たことがきっかけとなった。
ピンクはその後、政治的な色としても登場する機会が増えた。2017年には当時のトランプ大統領の政策や言動に抗議する女性たちがピンクを身に着けてデモ行進した。
バービー人形が1959年に登場した際、ピンクは着ていなかった。初代バービー人形は白と黒のストライプの水着を着ている。バービー人形とピンクの関係性が意識され始めたのは1970年代。
映画「バービー」の日本での公開は8月11日から。コロナ禍、ウクライナ侵攻による経済の混乱が続く中、ピンク一色に染まって笑い転げるのもいいかもしれない。
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