イラスト/渡辺裕子

 第18週があまりに悲しく終わったので、月曜の朝は「たぶん少し時間が経っていて、ふたりは悲しみを乗り越えてすでに第二子が生まれたところから週が始まるんじゃないかな」と思っていたんですが……そんな簡単に越えられるような悲しみじゃないですよ、とドラマに静かに諭されるような第19週の始まりでした。

 園子の着物を丸め、赤ちゃんのように抱いている寿恵子(浜辺美波)。

筆もとらず、無表情で座り込んでいる万太郎(神木隆之介)。深い悲しみの中、それでも、長屋の人々や寿恵子の母のまつ(牧瀬里穂)に見守られ、いつか園ちゃんとまた会えた時に図鑑を見せようと心に決めたふたり。そんな彼らのもとにやってきた小さな命、千歳の愛らしいこと。ただ長生きしてほしいというふたりの願いと祈りを名前として受け取ったちいちゃん、どうか健やかに。

 ロシアのマキシモヴィッチ博士が亡くなり、行き場がなくなった万太郎、まさに大ピンチ。仕事もないし、またお金を借りるつもりだった峰屋も今はない。

集めた標本500点も、寄贈という名目で大学に取り上げられようとしている。なのにそれらにつける名札をウキウキと楽しそうに書いている万太郎、ポジティブモンスターすぎる。そしてそんな彼の横で「やりましょう!」と肯定しかしない寿恵子、強すぎる。

 しかし寿恵子は自分のことを「取り柄がない」と、八犬伝に出てくる村人や草むらなどのいわゆる「モブ」だと思い込んでるんですよね。モブな自分が、物語の主役である八犬士=万太郎や綾(佐久間由衣)の活躍を、すぐ近くで見られるなんてありがたいことだ、と。さすがにこれには、テレビに向かって綾と一緒に「ちょっと待って」と思いっきりつっこんでしまいました。

確かに万太郎は天才だけど、あなたが横にいるから思い切り冒険ができているのに。あなたの強さこそ、物語の要なのに。あちこちで「あの高藤を振り切った」と強さを話題にされているのに。というか、退場してしばらく経つのにいまだに「あの高藤」って言われる高藤様(伊礼彼方)、ちょっとだけ気の毒。万太郎から見ても、寿恵子は生きる力が強い「笹」のような人。表面の美しさだけでなく、彼女の本質を愛している万太郎、さすが冒険の相棒
そういえば……このドラマ、あちこちに「あ、あの時のあれが、今!」という仕掛けが散りばめられていますが、「笹」も、心のかたすみにピンでとめておくといいかもしれませんね。

 寿恵子の強さは、暴漢に囲まれた田邊家でも炸裂。「お友だち」の聡子(中田青渚)を助けに突き進む寿恵子、かっこよかったー。それなのに帰宅した田邊教授(要潤)は、「槙野に言われてきたんだろう」「槙野の」「槙野は」と寿恵子を攻撃。そんな彼に対して「槙野にご執心なのは、あなた様ではございませんか?」と、どストレートに急所を一撃する寿恵子、容赦ない。内心うろたえている田邊教授、あんな男とは別れた方がいい・教育も受けていないくせにと、「ぼくがかんがえた寿恵子のじゃくてん」を攻撃してみるけど、万太郎ラブで八犬伝も読み込んでいる寿恵子にはノーダメージ。

逆に、妻の聡子からも怒りに満ちた目で見られた田邊教授、大ダメージ。

 研究する場も標本も失いつつも、万太郎は「できることを」と植物採集の旅に出かけ、山中で出会った虎鉄に教えてもらった植物が新種だと突き止めると、虎鉄と彼の学校の先生からたくさんの標本が送られてくる。万太郎の「好き」が、次々いろんな人とのつながりをうむ。好きのパワー、すごい。同じく「好き」パワーで生きる相棒の寿恵子も、八犬伝を読んだことがないという綾に「馬琴先生をお読みでない?(キラリっ)」 「読む前に戻りたいんです、そして馬琴先生にひれ伏したい」 と迫るけど、お寿恵ちゃんそれ、オタクがよく思う、周りの人も沼に引きずりこみたいとか、 記憶なくしてもう一度沼に入るあの感覚を味わいたいとかの……わかる、わかるけど、ほどほどにね。ほら、綾がひいてるよ?

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日刊サイゾー2023.07.17

■番組情報
NHK連続テレビ小説『らんまん
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子寺脇康文広末涼子松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純中村蒼田辺誠一いとうせいこうほか
作:長田育恵
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん「愛の花」
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
植物監修:田中伸幸
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/ranman