市川猿之助

ベテラン芸能リポーターの城下尊之氏が、とかくあおり・あおられがちな芸能ニュースをフラットな目線で、おちついて解説!

――父・市川段四郎さんと母親への自殺幇助の罪に問われている市川猿之助被告。7月31日の保釈後、都内の大学病院に入院していましたが、お盆明けに退院し自宅に戻ったそうです。

親が亡くなった事件現場に戻っていたとはびっくりです。

城下 びっくりですね。段四郎さんの生前からお手伝いしていた人が来ていて身の回りのお世話をしているそうです。ほかにも事務所関係者たちが出入りしてケアをしている様子。歌舞伎を運営する松竹も金銭的な面を含めてさまざまな面でフォローをしていると見られています。

 いとこの香川照之さんも、公演で京都にいる時でも、休演日には東京にとんぼ返りして猿之助さんに会いに行っているとか。

――香川は、2022年8月のセクハラ報道から1年経ちました。

城下 香川さんは2022年12月に歌舞伎で復帰。自身が経営する昆虫モチーフのアパレルや自然教育絵本の会社「アランチヲネ」も順調のようです。8月25日には、同社の公式のサイトで、「歌舞伎と昆虫にいのちを捧げる」といった内容のコメントを発表しました。セクハラ報道から1年経って、歌舞伎と会社経営に専念していくことを改めて宣言したわけです。このコメントの発表の前日に、猿之助被告の初公判が10月20日に決定しました。

――時期を合わせたということでしょうか。

城下 そうかもしれません。香川さんにしてみれば「澤瀉屋を何とかしないと」いう思いがあるのでしょう。猿之助さんの逮捕時、19歳の息子・團子さんが代役に立って賞賛されていましたが、猿之助さんのスーパー歌舞伎を團子さんが継げるかというとまだ若すぎる。香川さん自身は有名俳優でお客さんを呼び込むことはできますが、子どもの頃から稽古している歌舞伎役者と比べると、やはり40代で歌舞伎デビューしたためどうしても素養の違いが出てしまう。スーパー歌舞伎は、先代の猿之助さん、現在の猿翁さんが始めたもので、今の猿之助さんがさらにスケールアップしたドル箱の演目なんです。

――そもそも香川は猿之助とどういう関係でしたっけ。

城下 香川さんは猿翁さんの前妻との間の息子。猿翁さんの弟が、亡くなった段四郎さんで、猿之助さんのお父さんです。香川さんは歌舞伎では市川中車を名乗っていますが、もともと「中車」というのは市川團十郎さんのお弟子さん筋の名前で、屋号は以前は立花屋を名乗っていましたが、香川さんから猿之助さんと同じ澤瀉屋を名乗るようになりました。

 猿之助さんは息子がいませんから、澤瀉屋の跡継ぎは香川さんの息子の團子さんということになります。なんとか團子さんが育ち、スーパー歌舞伎を引き継げるようになるまで、澤瀉屋をパワーダウンさせないようにしなくてはなりません。

――そういうことなんですね。

城下 澤瀉屋だけでなく、猿之助さんに復帰してほしいと思っている歌舞伎関係者は多い。理由はやはり集客力です。猿之助さんがメインの歌舞伎は、毎回チケットが足りないと言われるくらいでした。今回の件があってもコアなファンは変わらず来てくれるでしょう。それだけ人気あるのにこのままではもったいない。

――猿之助自身は復帰したい気持ちはあるのでしょうか。

城下 猿之助さん自身は「もう表舞台には出ない」と漏らしているそうですが、そこを説得して「澤瀉屋を背負って立たなければ」という気持ちに変えていきたい。だから精神面を含めて香川さんをはじめ関係者たちが一生懸命、猿之助被告のフォローをしているわけです。そして、復帰に向けていい流れを作っていきたいと考えているということですね。