ジャニーズ事務所からの“圧力”やテレビ局の“忖度”によって非ジャニーズ系のボーイズグループが出演できないといわれていたテレビ朝日系音楽番組『ミュージックステーション』について、BMSG所属の男性7人組グループ「BE:FIRST」が初出演する方向で最終調整が進められていると一部で報じられている。
11日付のスポーツニッポンが〈Mステ、非ジャニーズに“門戸開放” 出演者偏りは番組側の忖度? BE:FIRST出演へ〉と題して報じており、同紙によると番組関係者は「新曲リリースのタイミングで番組に出演してもらう方向で調整している」と説明しているという。
同番組をめぐっては、ジャニーズ事務所の7日の会見にて記者が「過去にはジャニーズと競合関係にあったDA PUMP、w-inds.らが圧力や忖度によって『Mステ』に出演できず、現在もBE:FIRST、Da-iCE、JO1、INIらが出演できていない」などと指摘し、新社長に就任した東山紀之に「こうした忖度はまだ続いたほうがいいと考えますか?」と問いかけた。これに対し、東山新社長は「必要ないと思います。忖度とかそういうのは関係なく、公平に行くべきだなと思っています」と明言した。
BE:FIRSTの出演が調整されているという報道は、この“新社長のお墨付き”を得て番組制作側が動いた結果ではないかとみられる。
『ミュージックステーション』とジャニーズの蜜月関係は、1980年代末の番組初期にまでさかのぼる。1986年の番組立ち上げ当初から携わってきたエグゼクティブプロデューサーの山本たかお氏が2007年の講演で語ったところによると、番組のスタート当初は苦戦しており、かつてTBS系の音楽番組『ザ・ベストテン』がキャンディーズの解散を追う企画を毎週放送して視聴率をアップさせたという逸話にヒントを得、1987年にデビューするとあっという間に爆発的人気を呼んだ光GENJIを毎週出すというテコ入れ案を実施。これが見事当たった。光GENJIのレギュラー出演は1992年には終わったが、「われわれはそのことをいまだに恩義に感じている」と山本氏は明言しており、実際にジャニーズ事務所と「とても親密な関係」を築いた同番組は「毎週ジャニーズが出演する」を番組の特色に位置付け、その後も毎週必ずと言っていいほど最低1組はジャニーズ系グループが出演するという慣例が現在まで続いている。
同氏はw-inds.らが出演していないことについて、「ジャニーズからの圧力があるわけではない」としながらも、「みんなを公平に出したいと思っている中でなかなかそうはいかない」「『ミュージックステーション』はジャニーズがレギュラーの番組ということも紛れもない事実。なので彼らが出ている以上、歌って踊れる人たちがほかにも必要かというとそうではないし、だったらバンドにしようという傾向もある」と説明していた。
しかし、山本氏が講義をした2007年時点はともかく、その後の『ミュージックステーション』では、2009年に初の単独出演を果たした東方神起を始め、K-POP系ボーイズグループは問題なく出演している。となると、やはり「“レギュラー”のジャニーズがいるから、歌って踊れるグループは他にいらない」という説明には疑問符がつく。
実際、7日のジャニーズの会見ではジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦が「僕もこういう立場になって『これは、なんでこうなんだろう?』って疑問に思うことがあった。『昔、ジャニーさん、メリー(喜多川/元ジャニーズ事務所名誉会長)さんがこう言ったから』っていう、ちょっと昔のタイプのスタッフもいた」と語り、ジャニー氏およびメリー氏による“圧力”が存在していたことを暗にほのめかした。
このことは、ジャニー氏からの性被害を訴えた元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏が同様のことを語っている。今年4月に三崎優太氏のYouTubeチャンネルに出演した際、「自分たちでも『出ないよね』って、めっちゃ言ってました」とジャニーズJr.内でも他事務所の男性グループが音楽番組に出演する機会が少ないことを認識していたと言及。
長く続いた「ミュージックステーションによるジャニーズ忖度の歴史」が、東山新社長の「必要ない」というひと言によって、ついに終わりを告げることになりそうだ。東山新社長は“辞めジャニ”の活動についても「妨害しない」と明言しており、元King & Princeの平野紫耀や神宮寺勇太、元SMAPの香取慎吾ら「新しい地図」の面々などが遠くないうちに『ミュージックステーション』に出演できる可能性もある。特に香取はソロ歌手としてNHK、フジテレビ、日本テレビと出演の機会が増えており、期待したいところ。番組側としても、ジャニーズ以外のボーイズグループを出演させないと「忖度が続いているのでは」と疑われるため、公正さをアピールするためにも積極的に非ジャニーズ系を起用していきたいところだろう。
最近はTravis JapanとINIがSNSでコラボするなど壁が徐々に崩れてきている印象があったが、“ジャニーズ忖度の象徴”ともいわれた『ミュージックステーション』に変革が起きれば、芸能界にはびこっていた古い慣習を打ち壊していく流れはさらに加速していきそうだ。
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