2年半ぶりのロッチ&いま1番勢いのあるぱーてぃーちゃんがご来店!芸能事務所ワタナベを深掘り! | TVer

「上が詰まっていて、席が空かない──」

 現在のお笑い界で、あらゆる世代から聞こえてくる声だ。76歳のビートたけし、78歳のタモリ、68歳の明石家さんまのBIG3を筆頭に、その下には今年還暦を迎えたダウンタウン、そのひとつ下にウッチャンナンチャン、50代には、さまぁ~ずくりぃむしちゅー爆笑問題今田耕司東野幸治、さらに下にはバナナマン博多華丸・大吉ロンドンブーツ1号2号田村淳もいる。

揃いも揃って、MCクラスがみんな現役である。

 このクラスまでいって余力を残したままテレビから姿を消したのは、2000年に58歳で引退した上岡龍太郎と、ワケアリで退場した島田紳助雨上がり決死隊宮迫博之くらいだろう。とにかく、お笑い芸人は自分から辞めないのだ。

 そんな中、若手芸人たちは限られた席を巡って、賞レースに賭けることになる。『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)からはオードリー、『キングオブコント』(TBS系)からはバイきんぐ小峠英二あたりが出世頭といえるだろう。彼らのルートをたどれば、ある程度の露出は保証される。

勝負のリングには上がれるということだ。リングに立てさえすれば、居場所を確保する自信はある。だが、今はそのチャンスさえ回ってこない。多くの芸人が、そう歯噛みしながら、テレビに出るための「肩書き」を求めて賞レースの予選に臨んでいる。

 だが、賞レースを通らず、一足飛びにテレビの世界に飛び込んでしまった若手芸人もいる。

 11日放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)に前田裕太が出演していたティモンディは、相方・高岸宏行の圧倒的なポジティブ変人キャラで、あっという間に周囲を蹴散らし、バラエティに定着してしまった。

『M-1』には8回挑戦して、4度の1回戦敗退。最高成績も22年の3回戦までだ(10月12日現在9回目の出場中)。

 同日の『あちこちオードリー』(テレビ東京系)には、ぱーてぃーちゃん。こちらもギャル2人の突き抜けたキャラでブレークに手をかけている。金子きょんちぃ、信子ともに『千原ジュニアの座王』(関西テレビ)で優勝経験はあるものの、トリオとして賞レースに絡んできたことは一度もない。

 そのほか、数えるほどではあるが、ぼる塾、宮下草薙、鬼越トマホーク、やす子など、賞レースでの実績なしに定期的なテレビ出演のチャンスを獲得している若手もいる。

 彼らに共通するのは、やはり「タレント性」という言葉に尽きるだろう。ひと目で見て分かる個性。横並びにならない違和感。そうした武器があれば、一足飛びにテレビの世界に飛び込んでいけるということだ。

 では、突飛なキャラも、飛び道具も、ひと目でわかるタレント性も、賞レースでの実績もなければ、絶対に売れないのかと問われれば、やはり時間がかかるというのが正解だろう。

 例えば、年間200近いロケをこなして実績と信頼を積み上げた、なすなかにし

『THE MANZAI』(フジテレビ系)での決勝進出経験こそあるものの、長い間ラジオの中で独自の世界観を熟成させてきたアルコ&ピース・平子祐希。無駄なトガリで10年も「ネクストブレイク枠の筆頭」と呼ばれ続けてきたAマッソも、30代半ばになってようやく露出を増やしてきた。

 一度、売れてしまえば。

 そのAマッソのYouTubeに出演したアンガールズ田中卓志が印象的な言葉を残している。

「テレビの仕事なんて、いくらでもある」

 4年前のAマッソに、「テレビで売れる方法を講義」するという企画の中での話だ。打ち合わせに臨むときの心構え、ロケやひな壇での振る舞い方、昼・ゴールデン・深夜それぞれの時間帯での番組出演におけるスタンス、それらを具体的に伝授されたAマッソの加納が、あのトガリ顔で問うたときだ。

「教わったこと全部やって、5年後くらいに田中さんの仕事、全部取ります」(加納)

「ああ、それは全然いいよ。テレビの仕事なんて、いくらでもあるから。ある程度、仕事できるようになればね。俺の仕事を取ったところで、俺は別の仕事をやってると思うから大丈夫」(田中)

 このときの田中の発言は「席がない」の正反対だった。「キモカワ」という飛び道具でテレビデビューしてから20年、賞レースにほとんど絡まず実力だけで席を確保してきた芸人の、その凄みを見た。

(文=新越谷ノリヲ)