日本テレビ系列の日本海テレビ(鳥取県)の元幹部が毎年恒例の大型チャリティー番組『24時間テレビ』の寄付金264万円余りを着服していた問題で、視聴者から「他のテレビ局でもやっているのでは」「氷山の一角ではないか」といった疑問の声が相次いでいる。識者や業界内部からは、番組の存在意義にかかわる問題として寄付金の流れを徹底調査すべきとの指摘があるが、日テレは「スルー」の構えで物議を醸している。
日本海テレビは11月28日、田村昌宏元経営戦略局長が2014年以降に総額1118万円余りを着服していたと発表し、そのうち計264万6020円が『24時間テレビ』で集まった寄付金だったと明かされた。田村元局長は、募金終了後に金融機関に運ぶまで局内の金庫で保管されていた現金を持ち出すなどの手口で、コロナ禍で寄付金が少なかった時期を除いて毎年20万~50万円の着服を続け、後輩におごるための飲食費やスロットなどに使っていたという。
田村元局長は2014年に経理部次長に昇進し、その後部長になるなど、金庫を開けることができる立場を悪用したとみられる。しかし今年の11月、税務署の調査が入ること知って着服を自ら会社に申告し、社内調査の結果、寄付金の着服も明らかになった。
善意の募金がテレビ局幹部によってネコババされていた……この時点で番組の信頼が揺らぐような事件で、日本海テレビの田口晃也会長が引責辞任する事態になった。だが、これで幕引きとはならず、多くの視聴者が「本当に被害はそれだけなのか」ということに疑問を抱いている。
11月29日放送の情報番組『めざまし8』(フジテレビ系)では、元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏が、一般的な着服事件の被害額は「(当初発覚した額の)5倍、10倍くらいのことが多い」と指摘。続けて「徹底して膿を出してもらうために被害額は本当はいくらだったのか、警察に(捜査を)やってもらう。そういう姿勢じゃないと、こういうのは防げなくなると思います」と話し、実際の被害額がもっと大きい可能性があることを示唆した。
今回の事件は着服そのものだけでなく、税務署の調査が入るというきっかけがなければ発覚しなかったという、寄付金管理のずさんさも問題視されている。そのため、視聴者からは「他の系列局や日テレでも着服があるのではないか」と疑う声が噴出。日本海テレビの問題にとどまらず、日本テレビ系列全体の信用問題になっている。
だが、日テレは問題を大きくしたくないのか、自局のほとんどの情報番組で着服問題をスルー。報道番組で取り上げた場合も簡潔に原稿を読み上げるだけにとどめている。いつも舌鋒鋭い宮根誠司がMCを務める『情報ライブ ミヤネ屋』ですら着服問題を扱わず、視聴者からは「これじゃジャニーズ忖度と変わらない」という声が上がり始めた。
一応は日本海テレビも日本テレビも事件の「被害者」といえるが、それで済む問題とは思えない。本来であれば、旧ジャニーズ事務所が特別チームを立ち上げて性加害問題の被害実態を調査したように、日テレは『24時間テレビ』で集めた善意の募金を預かる立場として、自社と系列局の寄付金の流れや管理方法を徹底的に調査・究明し、視聴者の疑念を取り除くべきだろう。しかし、事件をほとんど報道すらしないとなると、実態を調べるつもりがないのではないかと思えてくる。
これをきっかけとして、かねてから指摘されていた「チャリティー番組なのに出演者にギャラが支払われる」「庶民から善意の募金を集めておいて、テレビ局は企業から高額なスポンサー料を取っている」「タレントやスタッフを酷使して働き方改革に逆行している」といった問題も再注目され、ネット上では「疑われたままで続ける気?」「もう潮時では」「時代に合ってないから終わるべき」などと打ち切り論が噴出している。
このまましれっと継続となれば、『24時間テレビ』の信頼は地に落ちるだろう。半世紀近い歴史を持つ同番組にとって、ここが大きな岐路となりそうだ。