24日に行われる漫才頂上決戦『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の敗者復活戦が、今年から大きくそのシステムを変更することになった。
2015年に再開されたいわゆる“新『M-1』”では、敗者復活での勝ち上がりをネット投票に委ねていたが、今回から会場投票+芸人審査によって決められることになるという。
具体的には、準決勝で敗退した22組からワイルドカード枠のダブルヒガシを除いた21組がA、B、Cの3ブロックに分けられ、それぞれ4分のネタを披露。これを会場からランダムに選ばれた観客が投票によって審査し、各ブロックの勝者3組の中から芸人審査員の投票でファイナル進出者を決めることになる。
芸人審査員が誰になるのか、観客投票は何票になるのかなど未発表の部分はあるが、いずれにしろ大きな変革となることは間違いない。
『M-1』敗者復活枠の国民投票については、毎年その是非が取りざたされてきた。その日のウケやネタのクオリティより知名度のあるコンビに有利になる傾向があり、無名芸人にとっては参加の意義さえ薄れているとも言われていた。
さまざまなエピソードがある。
15年に敗者復活から優勝を果たしたトレンディエンジェルは、自ら「敗者復活でのウケは7~8番目」と感じていたというが、それでも抜群の知名度があったことから「人気投票なら勝ち上がれる」と確信を持っていたと先月放送の『あちこちオードリー』(テレビ東京系)で明かしている。
18年にはラストイヤーで迎えたプラス・マイナスが圧倒的なウケをさらったものの、前年ファイナルに進出して人気上昇中だったミキに出し抜かれたこともあった。
20年には、本人たちをして「めっちゃスベった」と言うしかない出来だったぺこぱが、やはり知名度を生かして3位に。自他ともに困惑する事態を招いている。
翌21年には、当時まだ全国的には無名だったさや香が、勝ち目ゼロを見越して、インパクト重視のナンセンス漫才「からあげ4」を披露したこともあった。
いずれにしろ、知名度のない漫才師にとっては、決勝ストレートの9組に残らなかった時点で敗戦ムードが漂っていたことは否めない。
今回の変更により、知名度の低い漫才師にもファイナル進出へのチャンスが広がることになる。
これは、運営による大英断である。敗者復活戦は今や、『M-1』本戦を盛り上げるための重要なコンテンツだ。ネット投票のシステムがあることで、視聴者にチャンネルを変えさせない効果も少なからずあったはずだ。ラランドのように、敗者復活戦の規模が大きくなったことで恩恵を受けた漫才師もいる。それでも、視聴率より公平性を選択した『M-1』運営の決断は、大いに評価されるべきだろう。
10年までの敗者復活戦は、審査員による審査だった。そのシステムは07年にサンドウィッチマン、08年にオードリーという無名芸人を大ブレークに導いている。2組とも、ネット投票では勝ち上がる可能性の極めて低いコンビだった。
もともと『M-1グランプリ』は新人発掘を目的としたコンテスト番組だ。今年の準決勝でも、ぎょうぶ、スタミナパン、バッテリィズなど、敗退しながら決勝進出者に引けを取らないウケを獲得していた無名コンビも少なくない。
「人生、変えてくれ。」
このところ、毎年『M-1』のポスターに刻まれるキャッチコピーだ。
(文=新越谷ノリヲ)