テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム『万博の太陽』

 俳優の橋本環奈が、来年3月放送のテレビ朝日系スペシャルドラマ『万博の太陽』で主演を務めることが19日に発表され、公式サイトで万博ガール姿のビジュアルなどが公開された。ところが、発表直後から「プロパガンダまがいの万博宣伝ドラマ」などと揶揄する声があがり、橋本にも批判の矛先が向けられるなど意外な展開となっている。

 テレビ朝日開局65周年記念作品である同ドラマは、脚本家の中園ミホ氏をはじめとした同局系『ドクターX~外科医・大門未知子~』のチームが制作を担当。1964年の東京オリンピックを目にして「世界とつながる場所」にあこがれた主人公の朝野今日子(橋本)が、世界中の人たちと交流するために1970年の大阪万博のコンパニオンを目指すというストーリーだ。

 橋本は「“こういう時代もあったな”と懐かしむ方もいれば、私と同世代やそれよりも下の世代のみなさんは“こういう日本の姿もあったんだ!”と歴史的感覚で見られる作品」とコメントし、見どころとして「万博に憧れて“世界中の人々と交流してみたい”と思っている前向きな女の子が、自分の夢に向かってひたむきに走っていくところですね。爽快感もあり、とてもキラキラした作品だと思います」と語った。

 この発表を受けてファンは歓喜しているが、それ以上に目立っているのがドラマへの批判的な声だ。今作は2025年に開催を予定している大阪・関西万博を意識した作品であるのは間違いないが、肝心の万博は問題だらけ。

誘致決定時は1250億円だったはずの会場建設費が現在は倍近くの2350億円にまでふくらみ、政府はそれとは別枠でパビリオン「日本館」の建設費や警備費などで約837億円の国費負担が生じると明かした。

 また、国や自治体、民間による道路や鉄道を含めたインフラ整備事業費などでおよそ9兆7000億円、「空飛ぶクルマ」の実証実験など万博に向けた各府省の行動計画に盛り込まれた事業の実施費用として約3兆4000億円がかかるとされており、まるで“金食い虫”のようだ。さらに、海外パビリオンの建設が大きく遅れており、スケジュール管理の甘さが指摘されている。すでに失敗ムードが漂ってしまっているが、開催まで500日を切り、今さら中止の判断もできず、火だるま状態で突き進んでいる状況だ。

 そうした情勢を踏まえて、SNS上では「万博宣伝ドラマとしか思えない」「大阪・関西万博のマイナスイメージを払拭するためのプロパガンダドラマに見える」「橋本環奈の好感度をもってしても、このドラマは擁護できない」「テレ朝はモーニングショーとかで金食い万博を叩いているのに、こんなドラマやるとかガッカリ」などと批判的なコメントが続出。さらには「橋本環奈も仕事選ばないと」「橋本環奈さん、こういうの御用達みたいな印象あるなぁ」などと橋本にまで矛先が向けられている状況だ。

 橋本まで巻き込まれている状況に対して、日本維新の会の藤田文武幹事長は20日の定例会見で、「今かなり(万博への)ネガティブな報道や言論が飛び交っていて、オリンピックの時と非常に似通ってきている。万博関連のドラマをやる橋本環奈さんまでめっちゃ叩かれているみたいな。ネット空間でね。かわいそうやなと思って。機運醸成の一つでいい話じゃないですか。でも、そうやって非難しちゃうって心苦しい」などと言及。

同ドラマについて「機運醸成の一つ」と発言したことで波紋がさらに広がっている。

 ただ、当然ながらドラマが企画された段階では大阪・関西万博が「金食い万博」などと揶揄されるようになるとは思いもよらなかったとみられ、仕事としてオファーを受けただけの橋本にすればとばっちりだろう。作品自体は力が入っているようでデキ次第では評価が変わる可能性があるが、同じ国家的イベントに乗じたドラマとしては、東京オリンピックを意識した2019年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』が全話平均で大河史上最低の視聴率となったという前例があり、『万博の太陽』も大コケが懸念される。

 橋本は大みそかのNHK『紅白歌合戦』で2年連続の司会を務め、来年は好評だった舞台『千と千尋の神隠し』の再演や5年ぶりとなる新作写真集のリリース、そして2024年後期のNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』の主演という大仕事が控えている。賛否渦巻く『万博の太陽』が、大事な時期を迎える橋本の活動に影を落とすようなことにならなければいいが……。