俳優の水上恒司が絶好調だ。
今月12日、水上と福原遥がW主演する映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が昨年12月8日の公開から約1カ月で興行収入30億円を突破したと発表された。同作は、第二次大戦末期の日本にタイムスリップした現代の女子高校生と特攻隊員の青年の時空を超えた切ない恋を描いたもので、当初はテーマが重そうということもあってそれほど期待されていなかった。
ところが、若い世代を中心に口コミで人気が広がり、何度もリピート鑑賞するファンも続出。
水上といえば、放送中のNHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロイン・福来スズ子(趣里)の最愛の人・村山愛助を好演中。中高年の視聴者は今作で初めて水上を認識したという人も多く、ファン層が急拡大している。
さらに、2月には女性に刺されるホスト役で出演する映画『熱のあとに』の公開を控え、3月放送のテレビ朝日系スペシャルドラマ『黄金の刻(とき)』では主演の西島秀俊が扮する「東洋の時計王」こと服部金太郎の青年期を演じることが決まっている。
まさにオファーが絶えない売れっ子の若手俳優だが、業界内ではこのような状況になるとは思っていなかったという人が少なくない。
デビュー当時から「岡田健史」の芸名で活動していた水上は、堀北真希らを発掘したことで知られる女優系の有力芸能事務所「スウィートパワー」の男性部門に所属し、2018年のドラマ『中学聖日記』(TBSテレビ系)で頭角を現した。
独立を果たしたものの、「岡田健史」の芸名は使えなくなり、改名(水上恒司は本名)と一時休業を余儀なくされたことから「このまま消えてしまうのでは」と危惧する声が上がった。有力事務所と裁判沙汰のトラブルを起こしたとなると、テレビ局などが「忖度」で起用を控えるケースが多かったためだ。
だが、水上は前事務所時代から仕事への取り組み方がマジメで演技力にも定評があり、人柄も評判がよかったことから「また一緒に仕事がしたい」という業界人が続出。さらに、ジャニーズ性加害問題によって業界内の「忖度文化」が急激に弱まったことも大きな追い風となった。
また、昨年11月公開の映画『OUT』では「老け顔と筋骨隆々の肉体で10代に見えない暴走族副総長」という役柄をコミカルに演じて新境地を開き、阿部サダヲとW主演した映画『死刑にいたる病』でも難役をこなすなど、24歳の若手ながら演技の幅が広いことも大きな魅力だ。
本人の才能や人柄に加え、時勢も味方につけたことで大躍進となったようだ。前事務所は桐谷美玲、黒木メイサ、高杉真宙ら主力級が続々と退所したこともあって勢いが急激に低下しており、水上の抜けた穴の大きさをうかがわせている。朝ドラの撮影終了後はさらに仕事が増加するとみられており、快進撃はまだ始まったばかりのようだ。