(写真/Getty Imagesより)

 コロナ禍が明けて久しぶりに平穏が戻ったプロ野球の春キャンプ。ところがシーズンに向けて取材をしていた解説者たちがキャンプ地に来られない事態が続出しているというから穏やかではない。

 2月1日のキャンプイン。某球団のキャンプ地には毎年、バックネット後方上段に放送席が設けられて解説者、実況アナウンサーなどが連日生中継でキャンプの模様を伝えていた。

「ところが今年からはとあるスポーツ専門チャンネルのキャンプ中継が、東京都内にある局のスタジオから中継画面を見てキャンプの模様を伝える“オフチューブ中継”に切り替わりました。一応、現地には1人だけリポーターを置いていますが簡易中継システムを使っているのか、スタジオの出演者とのやり取りはスムーズにいかず互いに四苦八苦していました」(テレビ局スポーツ番組スタッフ)

 聞けばこの放送局は大幅な予算削減を断行したことで、1カ月近く続くキャンプ中継のうち滞在費用がかかる演者の現地出演をカットしたのだった。

「引き金になったのは石垣島のロッテのキャンプ中継だったと聞いています。コロナ禍の時、離島で中継スタッフが多数罹患してしまうと中継そのものが維持できなくなってしまう。

そのため最低人員だけを石垣島に送り込み、残りは東京からリモートで番組を進行することになったのです。これがある程度、違和感なく成立してしまったので、他局にも広がったという。もはや制作サイドが現場の臨場感や、クオリティの高さを追求しなくなってきているという意見もチラホラ……」(同)

 昨年日本一となった阪神戦を多数中継する、在阪テレビ局にも波は押し寄せてきている。

「2月24日に浦添市民球場でのヤクルト対阪神のオープン戦をローカル中継したカンテレ(関西テレビ)は系列キー局のCSチャンネルの中継映像を購入した上で、大阪の局スタジオから実況、解説の音声を乗せる形を取りました。地上波中継の放送席設営と出演者、技術スタッフの人件費、移動宿泊費を考えると100万円は優にオーバーしてしまい採算が取れないというのがその理由。同局はこれまでもオープン戦序盤に行われる沖縄での阪神戦中継を例年放送していますが、予算削減に伴い昨年からこっそり実施。

今後も継続するようです」(在阪テレビ局関係者)

 すでに球団が試合映像を直接的に制作しているパ・リーグはオフチューブ中継が多くなり久しいが「予算規模が大きい関西、東海地区でも始まるとなればいよいよ感が出てくる」と前出の関係者は語る。何とも世知辛い話だが……。