(写真/Getty Imagesより)

 熱狂的ファンから、かなりのブーイングが上がっていたことが容易に想像できる――。先日ヤクルトの本拠地、神宮球場の阪神戦で外野席が、“1席1万円”まで高騰したのだ。

 4月5日から7日まで行われたヤクルト対阪神戦は連日、タイガースファンが座る三塁側は“完売”状態だった。ところが問題なのは、ヤクルトが昨シーズンよりチケット販売に導入した「ダイナミックプライシング制」。これがアダとなりチケットの公式販売価格が急上昇したのである。

「タイガースファンが座るレフト側外野指定席の多くは9000円台後半で販売されていました。ヤクルトファンが座るライト側外野席はいずれも3000~4000円台だったことを考えると3倍ほどの価格が設定されたことになる。主催するヤクルト球団にとっては笑いが止まらない展開だったでしょう」(在京球団関係者)

「ダイナミック~」とは事前にAIが座席の需要を予想。

売れ具合に応じて日々価格が変動するというもので不人気カードは以前よりリーズナブルになる。一方で阪神戦などの人気カードは、今回のように価格が高騰し、販売されることとなる。一見不条理に見える施策だが、“ダフ屋”対策の側面も併せ持っているのだ。

「現在はヤクルトのほか、ロッテなども同じ方式でチケット販売しています。共通しているのはいずれも年間指定席があまり売れない球団です。阪神、巨人、中日など人気老舗球団は、全席席数の半分以上が年間指定席で売れてしまう。

特に阪神は昨年38年ぶりに日本一になったこともあり、年間指定席を買い求めるファンが殺到したとか。現在は7割近くが年間指定席で売れたとの話もあります。球団側としても年間指定席なら試合当日に人が座っていなくても収入を事前に確保できているので先を見越した経営計画を立てられる。こうした中、『ダイナミック~』は年間指定席以外での対戦球団による集客力の差を少しでも埋められる画期的な販売方法ですが、ファンの不満は溜まる一方です」(同前)

 球界関係者は「今回神宮球場のレフト外野席は辛うじて1万円を超えなかったが、去年みたいに阪神が独走態勢になれば今後の試合はもっと高値がつくことになる」と語る。

 今年は物価高などもあり、12球団各球場の飲食店でも軒並み値上げを余儀なくされ、プロ野球観戦が手ごろなレジャーではなくなった。昨春のワールド・ベースボール・クラシックの世界一や大谷翔平の活躍もあり観客動員が上向きの流れにあぐらをかいているとは言いたくないが……。