羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「何か言ったわ!」辻仁成
『解決!ナイナイアンサー』(日本テレビ系、3月24日放送)
バラエティ番組において、ナルシストは重宝な存在である。本人の発言自体がおかしいし、それをいじることによって、さらに大きな笑いを起こすことができる。今、一番“売れている”ナルシストキャラは、芥川賞作家で中山美穂の前夫、辻仁成だろう。
女性週刊誌で連載中の料理コラムが評判の辻だが、3月24日放送の『解決!ナイナイアンサー!』(日本テレビ系)で、北斗昌の所有する畑で取れた野菜を使って、腕前を披露する企画に参加した。辻は、ジャケットとシャツ、細見のパンツと、どう見ても畑仕事に向かない服装である。畑仕事の最中も、料理中もシャツの袖をまくらず、帽子も取らない(別番組で見た時も、ジャケットの袖から、レーシーなシャツの袖を出していたので、こだわりがあるのかもしれない)。
この企画のために、パリから調味料と辻がよく料理で使っているという「七つ道具」を持参する(メイクアップアーティストが筆を収めるような巻くタイプのポーチに収納)が、道具の1つである木の“棒”を、北斗昌が「何これ?」と手に取ると、辻は触れてくれるなとでも言いたげにすぐに奪い返していた。
自分の見た目にこだわり、自分の物には触れさせない。わかりやすいナルシストぶりだが、「この人、本当にナルシストなんだなぁ」と思ったのは、辻が度々北斗のことを無視することである。
北斗が、辻の持つ“棒”について「これ、うちの庭にも落ちてるよ」とツッコんだ時も、フランス製の塩の匂いを嗅いだ北斗が、「鼻がでかいから、匂いがよくわかる」とボケた時も、辻は何も言わない。北斗が「だから、何か返して!」と肘で小突くと、冒頭のように「何か言ったわ!」発言するが、番組を見る限り、辻は何も発言していない。
なぜ、ボケもツッコミも無視するのか。
才能が認められているものの、相手を無視する。この行動パターンで思い出すのは、“天才脚本家”といわれる三谷幸喜である。
例えばこんなエピソードがある。前妻である女優の小林聡美は、結婚生活の途中で、食事を作ることをやめたそうだ。
小林は、こういう自分中心の夫が合わなかったようだが、面白いことに、この世にはこういうタイプの男が好きという女性も存在する。いわゆる「才能に惚れる」タイプの女性である。
例えば、辻仁成の最初の妻、女優の南果歩。
捨てられた形となった南だが、その後、日本が誇る国際的俳優・渡辺謙と再婚。
電子音楽アーティストで、またもや才能のある人だが、インスタグラムに投稿された画像(中山美穂の後ろから抱きしめて、髪に口づけしている)から判断するに、ナルシストの匂いがぷんぷんする。
「才能がある(けれど、ナルシストな)男」を求めて、女たちがパートナーチェンジをする姿は、オクラホマミキサーに似ている。この関係、一見、女の方が我慢を強いられているようだが、実は彼女たちには、「こんな面倒くさい男を理解して支えられるのは私だけ」「彼の活躍は私のおかげ」というナルシシズムが潜んでおり、ナルシスト度合いで言うのならば、才能がある男より、それを求める女の方が強烈なナルシストなのである。
辻と中山が離婚を発表した時、マスコミは「理由」を探したが、離婚に理由も善悪もない。ナルシスト男がナルシスト女と結婚したが、ナルシスト女が別のナルシスト男に恋をして逃げられた。
(仁科友里)