一時は“最も総理の椅子に近い女性”ともいわれた稲田朋美氏。防衛大臣という立場でありながら、都議会議員選挙の自民党公認候補の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と、防衛省や自衛隊があたかも自民党の候補を応援しているともとられかねない失言をして、引責辞任した。

今回は、そんな稲田氏の筆跡を鑑定。筆跡鑑定人で、筆跡心理学に基づいた書籍『名前を書くだけ 自分のイヤなところは直る!』(東邦出版)の著者・牧野秀美氏に、人物像を読み解いてもらった。

■稲田朋美は、おっとりとした貴族的な気質

――不適切発言などを受け、稲田朋美防衛大臣が引責辞任しましたが、稲田さんの筆跡から、どのようなことが読み取れますか?

牧野秀美氏(以下、牧野) 彼女の筆跡から、人となりと、また防衛大臣は稲田さんにふさわしい役職であったのかを考えてみたいと思います。まず、新大臣のものに差し替えられる前の防衛白書のサインを見ると、横書きで「稲」の字のみ行書(少し崩した書き方)、ほかの字は楷書(崩さない書き方)で書かれています。一方、書籍へのサインは縦書きの行書で書かれています。

――多かれ少なかれ、誰でも横書きと縦書きだと、ちょっと字体は変わってしまいますよね。


牧野 はい。稲田さんも縦書きと横書きでの書体の違いについては、深い意味はありません。横書きは格式ばった防衛白書へのサインですから、意識して楷書的に書いたのでしょう。これからは縦書き、横書きを超え、共通する特徴を読み解いていきます。

 まず、稲田さんの文字は横に広がらず、かつ字間がのんびりと開いており、おっとりとした貴族的な気質であることがうかがえます。プライドが高く「なりふり構わず」や「修羅場」は苦手で、汚れ仕事には携わりません。


――確かに、修羅場であるほど輝きを放ち、汚れ仕事を辞さない松居一代さんは字間がみっちりしていましたが、それとは正反対ですね。

牧野 稲田さんは皆と汗水たらして一緒に労働するような、庶民的なタイプではないのでしょう。文字が軽い右上がりなので、考え方は保守的。さらに起筆(書き始め)に軽いひねりがあるので、意地っ張りな面もあります。しかし、それは「自分の強い信念がある!」という芯の強さからではないようです。なぜなら、へんとつくりの間の空間が広めなことから、物事にこだわりなく、上からの指示には素直に従うと思われるからです。





――メガネや網タイツなど、一見、こだわりがあるように見えましたが……。

牧野 稲田さんの「こだわりのなさ」は名字の「田」の字の接筆部(線が交わる部分)が閉じていたり開いていたりと一貫性がないことからもうかがえます。

 防衛白書のサインは接筆部が閉じ、転折部(横から縦に折れ曲がるところ)が角ばっていますが、書籍へのサインは接筆部が大きく開き、転折部も丸く書かれています。ほかの画像でも数点確認していますが、稲田さんの「田」の接筆部は閉じていたり開いていたりとバラバラなんです。しかも、「田」をはじめ、四角い文字の下の接筆部(線が交わる左右の角)が開いているものが数多く見受けられます。これは詰めの甘さにつながります。
防衛大臣としては必須の危機管理能力が不足しているといえるでしょう。

――その時の気分や、急いでいたなどの状況で、書き方が変わってしまうことはないのでしょうか?

牧野 同じ文字で、しかも書き続けているはずの「自分の名字の文字」でここまで変動することは珍しいです。

 筆跡診断の経験から、こだわりが強い人は文字の形も固定していることが多く、特に書き慣れた自分の名前は開くなら開く、閉じるなら閉じると安定して出てくるものです。まれに接筆部が閉じたり大きく開いたりと混合型の人もいますが、それでも文字によって「閉じたり、開いたり」が決まっていることが多いです。文字と心はリンクしていますので、稲田さんはこだわり(例えば政治的信条など)があまりないのではないかと読み取ることができます。



――稲田さんの名前にもある「美」は、女性の名前でよく使われる漢字です。
「美」の筆跡鑑定のポイントについて教えてください。

牧野 いくつかありますが、ここでは横棒の間隔に注目です。間隔が均等なら物事を理詰めで決めるタイプ、非均等なら気分で決めるタイプですね。稲田さんの場合は非等間隔ですので、物事は気分や感覚で決定するタイプです(「朋」の横棒の間隔も非均等です)。

 もちろん、もともと弁護士で政治家なのですから、理詰めで主張を組み立てることはできるでしょう。しかし、素の状態での決定は、気分に左右されることが多いようです。
押しに弱く、その気になりやすいともいえます。

 さらに、「朋」の横画の部分に、自分らしい工夫を加えています。これはお手本の形にはないもので、自己流でしょう。稲田さんは「人からどう見えるか」という視点よりも、「自分流のアレンジを加えたこと」に満足するのでしょう。そういう意味では、視野は狭いといえそうです。また、ハネも弱いです。防衛白書のサインは標準程度にハネていますが、ほかの画像では縦書きの「朋」の字に見られるようにハネが全くない形がほとんどです。これは良く言えば切り替えの速さ、悪く言えば責任感に乏しい、飽きっぽいということができます。

■場違いなポストに任命した側にも責任はある

牧野 まとめますと、稲田さんの文字からは、このようなことが読み取れます。

・のんびりおっとり型で、エネルギッシュに行動するタイプではない
・危機管理能力に乏しい
・客観的視点に乏しい
・弱いハネから見る責任感のなさ
・諦めや切り替えは速い

――上に挙げた気質は、もし稲田さんが「強くワンマンなリーダーの秘書」であるとするなら、むしろ生かせそうな点もありますね。あと、「貴族的で出すぎたところがない、おっとり型」って、モテそうな気質です。

牧野 はい。ただ、ハードでシビアな防衛省のトップは場違いでしょう。しかし彼女を責めるのは酷です。もっと適した場所があったはずなのに、これでは彼女を任命したのは何か意図でもあったのかと勘繰りたくなります。稲田さんらしさをフルに生かせるような場所で、政治家として力を発揮されることを願います。
(石徹白未亜)

牧野秀美
筆跡鑑定人。筆跡アドバイザー・マスター。筆跡心理学をもとにした鑑定と診断を行う。著書に『名前を書くだけ 自分のイヤなところは直る』(東邦出版)
ほっかいどう筆跡鑑定研究所