スウェーデン・アカデミーは10月5日、長崎県長崎市生まれの日系英国人小説家カズオ・イシグロ氏に、今年のノーベル文学賞を授与すると発表した。同氏の代表作である『わたしを離さないで』(早川書房)は、昨年1月期に綾瀬はるか主演でTBS系にて連続ドラマ化されたが、歴史的な大爆死を遂げていただけに、綾瀬の胸中も複雑に違いないだろう。



 同作は、イシグロ氏が2005年に英国内で発表して、ベストセラーとなり、10年には映画化もされた。日本では06年に単行本、08年に文庫本が刊行され、14年には、多部未華子の主演で舞台化されたほど著名な作品だ。

 ただ、なにぶんテーマが“臓器移植”とあって、暗く重い作品であるため、とてもテレビドラマ向きではなかったようで、ドラマ版は視聴者から総スカンを食らった。初回から、いきなり6.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と大コケ。その後も、6~7%台で推移し、自己最高も第3話、第5話の7.7%止まり。全話平均は6.8%で、“好感度ナンバー1女優”の綾瀬にとっては、想定外の大爆死となり、まさに思い出したくもない“黒歴史”となってしまった。

 だが、イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞したことで、思いがけず、同ドラマが再び話題に上ることに。綾瀬は所属事務所・ホリプロを通じ、「ノーベル文学賞、受賞おめでとうございます。日本のテレビドラマとして主人公を演じさせていただいた『わたしを離さないで』は、私にとっても宝物です。私もドラマ化をきっかけにカズオ・イシグロさんの作品に触れましたが、この度の受賞を機会に、より多くのみなさんがカズオ・イシグロさんの作品に触れられて、心に響くことを願っています。本当にうれしいです」などとコメントを発表したが、内心では、じくじたる思いがあったはず。

 このドラマの低迷をきっかけに歯車が狂ってしまった綾瀬は、その後のNHK総合『放送90年 大河ファンタジー「精霊の守り人」』も大不振。
4日にスタートした主演ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)で巻き返しを図りたいところで、初回は11.4%と、まずますの発進となった。思わぬ形で、大爆死ドラマがクローズアップされたが、『取り扱い注意』をヒットさせて、『わたしを離さないで』の話題は“封印”したいに違いない。間違っても、TBSが受賞記念に、再放送することなどないだろう。
(田中七男)

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