今回ツッコませていただくのは、3月10日に放送分『のどじまんTHEワールド!2018春』(日本テレビ系)番組観覧で感じた、Sexy Zone・菊池風磨のコメント力と、中居正広の“真のMC力”。

 日本の歌を愛する外国人が集まり、「世界一日本の歌がうまい外国人」を決めるチャンピオン大会。



 大御所歌手等の審査員とは別に、審査しない「ゲスト」の1人として菊池風磨が登場した途端、「え? なんで?」というざわめきが会場のあちこちから聞こえた。菊池はSexy Zoneの中では、歌担当ではあると思う。しかし、事務所全体では、歌唱力で名前の挙がる先輩がもっとたくさんいるはず。

 Sexy Zoneは今年の『24時間テレビ 愛は地球を救う』(同)のメインMCを務めるだけに、プッシュしたいのだろう……と思ったが、結論からいうと、菊池風磨はかなり賢く、バラエティ的に“使える人材”だった。

「テレビで母と一緒に見てたんですけど。ニコラスさん、めちゃめちゃカッコいいって言ってて。
生ニコラスさんに会えたって、いま複雑な興奮してます」と笑いも取りつつ、ホメたり、女性出場者には「シンプルにタイプです(笑)!」と、会場を盛り上げたりする。また、「こんなにうまく歌えたらモテるだろうなあ」「ここまでうまく歌えないから、ひとりカラオケ行く」などと自虐もする。

 中居が「あんまり歌うまくないんですか?」とツッコミを入れると、「はい……ここまでは」と答える菊池に、「あ~、仲良くなれそうです(笑顔)!」「ありがとうございます!」なんて具合に息の合ったやりとりも見せる。

 芸人と張り合ってグイグイ前に出るでもなく、かといって「歌手」として評論してみせるでもない。立場をわきまえつつ、それでいて無難ではなく、毎回さまざまなパターンでちょっぴり笑いも取りながら、自分の言葉でコメントする菊池。

 空気が読めて、押しも引きもでき、頭の回転も速く、語彙力があってウィットに富んだコメントができる菊池には、この番組のように「何かを見て、外の立場からコメントする」仕事はぴったりだ。
ひな壇仕事なども向いていそうな気がする。

 さらに、SMAPのコンサートには何度か足を運んでいるものの、テレビ番組での司会を生で初めて見た中居の「MC力」には、驚かされた。



 数々の番組で見る中居のMCのうまさというと、「相手をリラックスさせて、本音を語らせたり、いろんな表情を引き出したりすること」「トークを回すこと」「イジって笑いをとること」などのイメージがある。だが、画面には映らない部分で、こんなにも細やかに、こんなにもたくさんの仕事を1人で行っているとは思わなかった。

 会場に登場するなり、まず軽く観客をイジって空気を和ませたかと思うと、合間にちょこちょこメモを取っている。小道具がステージ上に残っていると、さりげなくスタッフに指差しと目配せで知らせ、指示を与える。


 歌を聞きながら口ずさみ、審査員にコメントを求め、そのコメントが冗長になったり、会場がなんとなくシーンとしたりすると、すかさずゲストをイジるなどして空気を変え、テンポをアップさせる。歌に関係ないゲストたちが配置されていたのも、番組の流れにメリハリをつける上で必要だったのかもしれない。

 さらに、出場者の伴奏の楽器に音声トラブルがあったときには、演奏をストップさせ、「ゆっくりでいいですよ」「もう1回チェックした方がいいんじゃないかな?」と自らが出場者の元に行き、楽器のチェックを念入りにする。そして、何度も「申し訳ない」「こちらのミスですから」「本当にすみません」と出場者たちに声をかける。

 テレビで見ていると、こうした部分はわからない。通常、トラブルが起こった際には、スタッフが動くものとばかり思っていたが、中居は自ら出場者に声をかけ、謝罪し、チェックし、その間も審査員やゲスト、観客を置き去りにしないよう、絶えずおしゃべりを続ける。


 トラブル時にも流れを止めず、細部まで目を配りながら、番組を動かしていく。番組の大きな流れから、隅々の細部まで、1人で仕切っているように見える。

 この仕事ぶりは、一般的にイメージする「進行役」というよりも、1,600人もの観客を含めたオーケストラの指揮者のようだ。

 中居のMCが高く評価されるのは、楽しいおしゃべりやトークの回しよりも、実は画面に映らない、こうした番組の表から裏まで、大きな柱から細部までの全てを掌握する力があってのことではないか。あらためて「真のMC力」を思い知らされた。
(田幸和歌子