この冬、記録的な大寒波に見舞われたアメリカは、すでに多くの人が春を待ち望んでいる。しかし春はテレビ番組の放送継続/打ち切りが発表される時期のため、視聴率がイマイチだった番組関係者たちは春の到来にヒヤヒヤしていることだろう。



 昨年は、ジェニファー・ロペス主演の『シェイズ オブ ブルー ブルックリン警察』、マーベル・コミックの人気シリーズを原作とした『マーベル イン ヒューマンズ』、プリヤンカー・チョープラー主演の『クワンティコ/FBIアカデミーの真実』、オタク系天才集団が難事件を解決する『SCORPION/スコーピオン』、ブリート版『X-ファイル』などが打ち切りとなった。架空の警察署を舞台にしたコメディ『ブルックリン・ナイン-ナイン』も放送終了が発表されたが、多くのファンの強い要望により復活。しかし、このようなケースはまれである。

 そんなシビアな米ドラマ業界において、長々と制作が続いている作品がある。視聴率も人気もあるという作品が多いが、中には「終わるタイミングを完全に逃している」「ずるずると放送しているだけで、おもしろくない」と思われている作品も。今回はそんな「アメリカで打ち切りが望まれているドラマ」を紹介したい。
(参照:エンタメ情報サイト「FANSIDED」)

『スーパーナチュラル』

 米The CW(旧The WB)局で2005年9月から放送されているホラーサスペンスドラマ。幼少期に悪魔に母親を殺された兄ディーン(ジェンセン・アクレス)と4歳年下の弟サム(ジャレッド・パダレッキ)が、ハンターとして悪霊退治に奮闘する物語。魔王を封印しようと全米各地で悪魔たちと戦い、時には悪魔になり、天使になり、刺客に翻弄され、絶望するという、手に汗握る展開が続く。「悪魔」や「天使」などキリスト教にまつわる存在だけでなく、魔女、吸血鬼、狼男、ゾンビや妖怪などが登場。オカルト好きな視聴者に長年支えられてきた。

 実は番組クリエーターのエリック・クリプキはシーズン3で番組を完結させるつもりだったが、途中でシーズン5まで制作すると変更。

プロット(物語)が一巡したシーズン5でエリックは降板した。その後、「主要キャラクターが死に、地獄に堕ちた後に蘇る」というパターンが何度も繰り返されるため、「また?」としらける視聴者が続出。それでもシーズン15の更新が決定したのは、熱狂的なファンのおかげだといわれている。18年のThe CWの高視聴率ドラマランキングでは3位と好位置につけたが、そろそろ幕を引く時機なのかもしれない。

『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』

 米ABC局で2005年3月にスタートした医療恋愛ドラマ。外科インターンとして、シアトル・グレース病院で働くことになったメレディス・グレイ(エレン・ポンピオ)の医師としての成長、胸が締め付けられるような恋、同僚医師たちの恋模様、友情などが描かれている。
ヒューマンドラマとしても質が高く、登場するキャラクターは多種多様。ショッキングなエピソードもあり、長年「飽きがこない」と人気を集めていた。

 スピンオフ作品『プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち』(07~13)や『Station 19』(18~)、ウェブシリーズとして配信された『Grey’s Anatomy: B -Team』(18)と、関連作品も好評。売れっ子クリエーターでもある、製作総指揮者ションダ・ライムズの才能が感じられると業界からも高く評価されていた。

 しかし、この番組で名が売れた多くの役者が番組を降板。新しいキャラクターが入ってきたと思ったらすぐ去っていくというパターンが定着すると、キャストの入れ替わりの激さに戸惑う視聴者が続出。
物語もどんどん非現実的になっていき、シーズン1からの視聴者も「また波乱?」「ひとつの病院で、これだけのことが起きるなんてあり得ない」「ついていけない」と脱落。視聴率は稼ぐものの、「もうそろそろハッピーエンドで幕を下ろしてほしい」という意見が強くなっている。

『Hawaii Five-0』

 米CBS局で2010年9月に始まった刑事ドラマ。1960年代後半~80年代に大ヒットした『ハワイ5-0』のリメイク版で、常夏の島ハワイを舞台に、同州で発生する犯罪に立ち向かう特別捜査チームの活躍を描く。凶悪犯罪をスピーディに解決していく刑事たちの姿が痛快で、11年に発表された「全米新作番組視聴率」では1位を獲得した。人気ドラマ『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカ、人気セレブのケンダル・ジェンナーや日本の女優・すみれもちょい役で出演するなど、ゲストも多彩でファンを楽しませていた。



 しかし、昨今の「オリジナルに変更を加える」リメイク版ブームにうんざりしている人も多く、本作の人気も低迷。シーズン8で主演のアレックス・オローリンとスコット・カーンの契約が切れたため、このタイミングで終了かと思われたが、結局2人は契約を更新。オリジナルドラマのファンからは、「シーズンを更新するなら、せめてオリジナルに寄せた内容にしてくれ」という要望が上がった。安定した視聴率を維持しているのは、アメリカ本土に住む人にとって憧れのリゾートであるハワイを見たいからだとされ、ドラマ自体は酷評されている。



 米CBS局で、2005年9月より放送されている大ヒット・クライムサスペンスドラマ。残酷極まりないシリアルキラー(連続殺人鬼)の次なる犯行を先回りして防ぐため、プロファイリングで犯人像を推理するFBIの活躍を描く。


 この作品は実際に起こった事件をヒントにしたエピソードがあり、描写もとてもリアル。捜査官自身もシリアルキラーたちのターゲットとなって、危険な目に遭うことが多い。そんな彼らの苦悩が繊細に描かれており、キャラクター目当ての視聴者も獲得した。

 普段は軟派なイケメンながらも、事件になると熱血捜査官に変貌するデレク・モーガン役のシェマー・ムーアはシーズン11で番組を去り、冷静にチームを引っ張ってきたアーロン・ホッチナー役のトーマス・ギブソンはスキャンダルのためシーズン12で降板。「これは人気キャラになるかも!」とファンを期待させたケイト・キャラハン役のジェニファー・ラブ・ヒューイットは、登場したシーズン10の1シーズンだけで降板。メインキャラクターを演じた俳優は降板後に復帰したり、ゲスト出演したりすることもあるが、「ここ数シーズンは昔のような一致団結が見られずにつまらない」との評価が聞かれる。モーガンやホッチナーに代わる人気キャラは出てこないため、「駄作になる前に終わらせた方がいい」とドラマの行く末を懸念するファンは非常に多い。

『モダン・ファミリー』

 米ABC局で2009年9月から放送されている、大ヒットコメディ番組。気難しい会社経営者ジェイの再婚相手は、年の離れたコロンビア出身のセクシー美女グロリア。彼女の連れ子はませた性格で、ジェイとグロリアの間に生まれた息子は愛されキャラ。また、ジェイと前妻との間の長男はゲイで、同性パートナーと迎えた養女の子育てに大わらわ。長女は男勝りな性格で、彼女の夫は性格は良いがどこかマヌケで、3人の子どもたちは「超イマドキ」な性格。そんな3家族が次々に降りかかる災難を家族の絆と愛で乗り越えていく姿が大ウケし、たちまち国民的コメディになった。

 地上波のプライムタイムでLGBTQや中南米移民、アジアからの養子などが普通のこととして描かれているのは、この作品が初ともいわれている。米ドラマ界の最高栄誉である「エミー賞」の常連となり、全米脚本家組合の「史上最高のテレビドラマ101」にも選ばれるなど、業界からも高く評価されている。

 しかし、ここ数年は放送開始時のような「目新しさ」に欠けているとの指摘も。シーズンを重ねるうちに長女夫婦の3人の子どもたちがすっかり成長したため、ドラマの要である彼らのジョークや引き合いに出す固有名詞が「古い」と感じられるようになったのだ。もはやモダンではない『モダン・ファミリー』を、人気のあるうちに終わらせたいと願う視聴者は決して少なくないのである。

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 2017年3月に大手動画ストリーミングサービス「Netflix」で配信されるやいなや、たちまち大きな話題となった作品。ジェイ・アッシャーのベストセラー小説が原作で、「自殺した女子高生から、“自殺する理由”を語った7本の録音テープが同級生の元に届く」という出だしと、その衝撃的すぎる内容で社会現象を巻き起こした。

 若年層に影響力を持つ女優セレーナ・ゴメスが製作総指揮を務めた作品としても注目を集めたが、そんな彼女がいじめ、性暴力、自殺を生々しく描くことで、ティーンにトラウマを与えてしまう、自傷や自殺リスクを高めるといった警告が専門家からも聞かれた。

 非常にメッセージ性の強い作品ではあるが、シーズン2では前作より激しい性暴力や暴力シーンが描かれており、賛否両論が巻き起こった。「ここまでする必要はなかったのでは」と感じる視聴者も多く、その結果、制作側の本来のテーマやメッセージが正しく伝わらずに、衝撃的な内容ばかりが印象に残る作品になったとの指摘も。すでにドラマは原作の世界から離れているため、ネットでは「なぜ(原作の世界で終わる)ミニシリーズにしなかったのか」「気が滅入る世界を長く続けないでほしい」という意見が飛び交っている。

『フラーハウス』

 Netflixで2016年2月から配信された、メガヒットドラマ『フルハウス』(1987~95)のスピンオフシリーズ。オリジナル版は妻を事故で亡くした中年男性が、妻の弟と親友の協力を得て、幼い3人の娘たちを育て上げていくというハートフルコメディだった。『フラーハウス』では成長した長女と次女、長女の親友の子育てを中心に物語は展開していく。

 私生活でも仲の良いオリジナルキャストが出演すること、オリジナル版の舞台セットを再現して撮影に使っていることなどで、配信開始前から大注目されており『フルハウス』ファンを夢中にさせた。また、オリジナル同様、小さな子どもからお年寄りまで幅広い年齢層が、シビアに考えずに楽しめる“軽めの”内容も好評だった。

 しかし次第に、この“軽めの”内容に飽きる人が続出。『フルハウス』で頻出していた品のないギャグは90年代には大ウケしたが、現代では何度も繰り返されると嫌悪感を覚える人が多い。子役から女優に成長したメインキャストたちの演技力が期待以下だったということも、人気低下に輪をかけている。Netflixがシーズン4更新を決定したが、「三女を演じたオルセン姉妹をサプライズ出演させるくらいのことをしなければ、もう魅力を感じられない」という人が多いようだ。