北朝鮮で最も神聖なものとして扱われるのは、銅像や肖像画など金正恩氏一族のシンボルである造形物だ。例えば銅像は、電力が不足していても、24時間体制で照明により煌々と照らされ続ける。

だが最近、その聖なる場所がゴミ溜めと化しているとの情報が、咸鏡南道のデイリーNK内部情報筋から寄せられた。

今月初め、端川市から新興郡に農村支援に来ていたある大学生が、「モザイク壁画周辺があまりにも汚い」と、朝鮮労働党端川市委員会の幹部に訴えた。

金氏一族を神格化する対象の管理がずさんであることは、政治的に重大な問題と見なされる。

情報筋は、「最高指導者が描かれたモザイク壁画の周囲は清掃がまともにされておらず、動物の排泄物とゴミが溜まっていた。これは絶対にあってはならないことだ」と語った。

この件は朝鮮労働党咸鏡南道委員会に報告され、里(最小の行政単位)の党書記には警告処分が下された。「真心事業(銅像など神格化造形物への清掃奉仕)をおろそかにすることは思想の緩みと見なされる」として、真心事業に力を注ぐよう指示文が出された。里の党委員会は、順番を決めて交代で住民に掃除させることとしたという。

情報筋は、「真心事業はもともと順番で行われていたが、いつからかその体制が曖昧になっていた」とし、「今回問題が起こると、農場の作業班たちは互いに責任逃れに必死だった」と伝えた。

なお、咸鏡南道の党委員会宣伝扇動部は今月18日、道内すべての市・郡の党に対し、今年上半期の革命事跡物の管理状況に関する調査と総括を実施すると通達したという。それに伴い、郡内の他の地域でも一斉に警戒を強める動きが広がった。

これまで銅像などの管理をおろそかにしていた農民たちも、今では早朝からバケツを手に水洗いをする姿が、村の教養広場で連日見られるようになったと情報筋は語った。

一方で、住民たちは「真心事業に心血を注げ」という党の指示をさほど深刻には受け止めていないものの、モザイク壁画周辺が汚いと問題提起した大学生に対する批判的な空気が広がっている。

情報筋は、「『わざわざ問題を提起する必要があったのか』『余計に騒ぎを大きくした』と大学生を責める反応が多い」と述べた。

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