北朝鮮北部の山間地で、学校に通わず働く子どもたちが急増している。背景には、極度の物資不足と配給制度の機能不全がある。
両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、最近恵山市の郊外の田畑や中朝国境を流れる鴨緑江の川べりで、「ヒル」を捕まえる子どもたちの姿を頻繁に見かけるという。
ヒル採りをする子どもたちの多くは、農場で働く親を持つ家庭の子どもたちだ。だが、農場からの配給だけでは生活が立ち行かず、子どもを学校に通わせず、ヒル捕りに駆り出す例が後を絶たない。
ヒルは、5月から10月にかけて、田植え後の水田や水路、川辺などで採取できる。現地では「ブタビル」と呼ばれる大型のヒルが特に高値で取引されている。
採ったヒルは乾燥させ、「デコ」と呼ばれる買い付け業者に10gあたり6元(約122円)で売却される。その後、密輸業者に8元(約163円)で転売され、最終的には10元(約204円)で中国へ輸出される。
北朝鮮ではウォン安と物価高が同時に進行しており、1ドルは約3万800北朝鮮ウォン(約147円)、コメ1キロは約1万3700ウォン(約53円)にも達している。
ヒル1回分の取引でも、コメ2キロを購入できる金額になるため、家計への影響は大きい。中には、毎日ヒル採取に出ることで、3~4カ月で1000元(約2万500円)を稼ぐ子どももいるという。
情報筋は、「農民が1年間働いて得られる配給では3人家族が4カ月暮らせる程度だが、ヒルで1000元稼げば半年以上は食いつなげる」と証言している。
ただし、ヒル捕りには危険も伴う。
情報筋はこう語る。
「国境地帯はすべて警備隊の取り締まり区域。見つかれば問題になる」
「子どもたちは『静かにヒルだけ捕って帰るから』と懇願するが、兵士たちは『外国に“朝鮮人は虫を食べて生きている”と報じられたらどうする』と怒鳴って追い払う」
今回のヒル捕りの事例は、北朝鮮の児童労働問題の一端にすぎない。教育の機会が奪われ、子どもが労働力として使われている現状は、児童の権利条約にも反するものであり、国際社会の関心と対処が求められている。