北朝鮮の内閣と検察は今年5月下旬、肥料やビニールシートなどを取り扱う国営の店舗に対する監査を開始した。不正の噂が絶えないこれらの店舗で事実と判明すれば、幹部に対する大々的な処罰が予想される。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

農業部門に詳しい両江道の情報筋によると、監査を受けているのは両江道営農物資交流所と、各市・郡の農村資材販売所だ。内閣農業委員会と中央検察所による抜き打ちの監査に対し、道農村経理委員会や市・郡農業経営委員会の幹部たちは困惑を隠せずにいるという。

営農資材交流所と農村資材販売所は2022年から2023年にかけて開設された。ここでは、工場や企業所が国家生産計画(国から課されたノルマ)達成後に余った生産品や、個人の余剰食糧を売買でき、営農資材は市場価格より3割安く販売される。

北朝鮮の農民は、農業政策の破綻によって十分な収入を得られず、ヤミ金から借金して営農資材を購入する事例が多く、返済できずに農村を離れる農民も少なくないとされる。これらの課題を解消する目的で、こうした店舗が設置されたと考えられる。

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しかし、販売利益の1割と営農資材の売上は全額を国に納めなければならず、領収書の発行も義務付けられているため、店舗の利用者はほとんどいない。入荷情報を聞いて訪れても、「在庫がない」と言われるばかりで、幹部とトンジュ(富裕層)が結託して物資を横流ししているとの疑惑が根強い。

現地の農民も、「昨年、営農物資交流所が肥料を販売したことは一度もない。恵山市の検山里駅に三度も大量の化学肥料が到着したが、農村資材販売所での販売は一度きりで、しかも一つの農場に3トンずつしか配られなかった」と語った。実際には、店舗ではなく個人の商人から肥料を購入したという。

情報筋は、「国家が供給し農村資材販売所で売られるはずの物資も、貿易会社が中国から独自に輸入した物資も、結局はトンジュの手に渡る運命だ」と指摘した。

国が3割安で売るはずの営農資材を、農業部門の幹部が高値でトンジュに横流しし、貿易会社も国に納める管理費や利益分を避けるために、交流所を使わずトンジュと裏取引をしているという。

農民の不満は高いが、「監査をしても結局はその場限りだ」との声も多く、抜本的な改革は期待されていないようだ。

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