北朝鮮北東部の大都市・清津で、40代の夫婦が刃物を持って激しく争う事件が発生した。この夫婦は覚せい剤を常習的に使用しており、市民の間では覚せい剤の危険性と深刻な影響が改めて認識されている。
咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋によると、事件が起きたのは先月中旬のこと。清津市内のマンションで40代の夫婦が刃物を手にして激しく争い、近隣住民に大きな衝撃を与えた。「以前から夫婦喧嘩はあったが、刃物まで持ち出したのは初めてで、噂が絶えない」と同筋は話している。
近隣住民の間では、この夫婦が覚せい剤を常用していることは知られていた。覚せい剤の影響で性格が荒くなり、暴力性が次第に増し、喧嘩の頻度と激しさも増していることに懸念が広がっているという。
夫は運転手として働き、一定の収入があり、経済的には比較的安定した生活を送っていた。しかし、いつしか夫婦間の喧嘩が激化し、あざだらけの妻の姿が頻繁に目撃されるようになった。
情報筋は「妻が市場に出る必要がないほど夫の収入は安定しており、一時は周囲の女性たちの羨望の的だったが、今では『あんな暮らしをして何になるのか』と言われている」と語り、「覚せい剤使用による家庭不和のせいで評判は非常に悪い」と続けた。
さらに「今回の事件は、覚せい剤がいかに深刻な問題を引き起こすかを示す典型的な例として、住民の間で受け止められている」と述べた。
同様の問題は他地域でも発生している。
両江道の情報筋は「恵山市にも覚せい剤を夫婦で使用している家庭がある。普段は仲が良くても、ひとたび喧嘩になると、本当に噛み付き合うかのような激しい争いを始める」と語る。
また、「ここ数年で取り締まりが強化された結果、覚せい剤の使用場所は外部ではなく家庭内へと移り、そのために夫婦で使用するケースが増えている」とも話した。
北朝鮮当局は、覚せい剤の蔓延が社会問題化する中、2021年7月に「麻薬犯罪防止法」を制定し、取締りと処罰を強化した。さらに2022年5月には刑法を改正し、麻薬関連の条項を従来の4件から8件に増やし、刑罰も大幅に強化された。
情報筋は「取締りがどれほど厳しくなっても、覚せい剤使用者たちはより巧妙に隠れるだけだ」と指摘し、「その副作用として夫婦間の対立が激化し、事件や事故が絶えない」と語った。