北朝鮮・平安南道の地方当局が、若年層の就職難と「無職者」急増に対応するため、独自の調査と対策を行い、中央政府に報告した。
これは北朝鮮の若者の失業問題や就職対策をめぐる実態を浮き彫りにしている。
デイリーNKの現地情報筋によると、平安南道人民委員会(道庁)は先月中旬、「青年層の無職現象に関する全面調査および解決方向」という報告書を作成し、内閣および朝鮮労働党中央に提出したという。
報告書は、2025年上半期に道内の18~30歳の若者の社会進出率が著しく低下し、「非生産的待機者」が急増していると指摘。中学・大学卒業者約3200人のうち、職場に未配属、または職場を離脱後復帰せず個人商売に従事している若者が2200人以上に上るという。
なお、北朝鮮の労働政策では、国が指定した職場以外で働く行為は「無職」とされ、取り締まりや行政処分の対象になる。商売をして自分の店を持っていても「無職」とされるのだ。
報告書ではこうした現象を、「労働意欲の欠如」や「思想のゆるみ」と決めつけず、職場での無給労働や配給制度崩壊といった構造的問題を強調。若者たちの就職を阻む環境の改善が必要だと訴えている。
そのうえで、道当局は「青年就業案内および配属解決グルパ(対策班)」を編成し、7月5日から9月30日まで集中的に活動を行う方針を盛り込んだ。グルパは若者を頭ごなしに取り締まるのではなく、家庭訪問や個別相談を通じて、希望に沿った職場への再配属を促す「啓発+斡旋型」の形式で運営されるという。
無職の若者が平壌に出入りすることへの警戒感も強く、当局は「首都に近い地域での失業増加は体制にとって深刻な脅威」と判断。北朝鮮における若年失業対策は治安維持とも密接に関わっている。
ただし、たとえ職場に配属されたとしても、満足の行く配給も賃金も得られない。