格差の著しい北朝鮮では、階層によって使う石鹸にも違いがある。富裕層は購入石鹸を使うのに対して、貧困層は「メジュ石鹸」と呼ばれるものを使っている。
両江道の情報筋によると、現地の富裕層は洗顔用に、平壌化粧品工場で生産される最高級の高麗人参石鹸や牛乳入りの石鹸を使っている。1つで6元(約126円)もする。一方、貧困層が使うのは「メジュ石鹸」だ。
「メジュ」とは、大豆を茹でてよく潰し、四角に固めて軒先で吊るした麹玉のことを指し、味噌や醤油を作る際に使われる。茹でた大豆を潰すときに苛性ソーダを入れたものを、作り方がメジュに似ているとして。「メジュ石鹸」と呼ばれるようになった。こちらは市場で1つ0.5元(約10円)で売られている。
1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころに編み出されたものだが、長持ちし汚れもよく落ちるため、貧困層や農民のみならず、都市在住の中間層の中にも好んで使う人がいる。昨年からの物価高騰で懐が苦しくなった人の間で再び使われ始めたという。
両江道の別の情報筋も、使う石鹸、食事などによって階層が明確に分かれると述べた。コロナ前までは富裕層、中間層、庶民に分かれていたが、今ではその下に貧困層ができた。
一方で貧困層は、1日1~2食を抜く人のことを出す。都市では商売がうまくいかない人、農村では農作業を担う家族がいない人がこれに属する。
「昨年、労働者の月給が従来の2500ウォン(約0.27ドル)から3万ウォン(約3.3ドル)に上がってから、物価が急騰し、貧富の格差がさらに拡大した。駅前や市場の周辺で大幅に増えたコッチェビ(浮浪児)は、この格差の深刻さを象徴している」と情報筋は指摘した。
「富裕層は軍や国家建設支援物資を通じて金の力を見せびらかしているが、都市や農村の貧民たちは満足に食事すらできない。『メジュ石けん』すら買えない人も多いのがこの国の現実だ」と情報筋は語った。