北朝鮮の朝鮮人民軍内部で不正が蔓延し、兵士や下級軍官に対する不当な金品の上納が常態化している実態が明らかになってきた。経済難に直面する北朝鮮では、軍も例外ではなく、制度の綻びと統制の弱体化が進行している。

デイリーNK内部情報筋によると、平安北道(ピョンアンプクド)の国境警備隊の政治将校が、金品を得る目的である兵士を実家に帰宅させていたことが発覚し、大きな問題となっているという。

情報筋によると、平安北道に駐屯する国境警備隊第31旅団の所属大隊の中隊政治指導員Aが、20代前半の兵士Bを繰り返し帰宅させ、現金やブドウジュースの原液、生活用品などを調達させていた。しかし、今月5日に旅団保衛部の抜き打ち検閲が行われ明るみに出た。

調査によると、AはBの家庭環境がいいことを知った上で個人的な指示による「私的任務の遂行」として帰宅させ、上級の政治部幹部に献上する目的で、金品を持ってこさせていた。さらに、朝鮮労働党の「入党推薦」や「社会大学進学」を口実に、繰り返し物資提供を要求した。Bの両親も、Aの要求に応えていたことを認めており、AとBの両親の間ではある種の取引関係が築かれていた。

情報筋によると「旅団保衛部は今回の事件を単なる規律の緩みではなく、政治的報酬を媒介とした非公式な取引慣行が夏季訓練中にも露骨に行われている深刻な問題として受け止めている」というが、今回の事件は氷山の一角であり根絶は困難だろう。

金正恩政権は、核ミサイルや駆逐艦など「兵器」には惜しみなく資源を投入するが、「兵士」には十分な物資を支給せず、「自力更生」のスローガンのもとに自給自足を強いる。結果、略奪まがいの行為が横行し、党推薦や昇進に関しても賄賂が常態化。軍紀は乱れ、兵士の士気も低下するという悪循環が繰り返されている。

「自力更生」はもはや、略奪、腐敗、不正を正当化するスローガンになっているようだ。

編集部おすすめ