アジア女子サッカー界で存在感を高める北朝鮮の強豪「ネゴヒャン女子蹴球団」。先日の国際大会優勝を受け、改めて注目が集まっているのが、その“親会社”とも言えるネゴヒャン(内故郷)貿易会社の実像だ。
韓国・東亜日報の北朝鮮専門記者、チュ・ソンハ氏は5月のコラムで、ネゴヒャンの出発点を2000年代初頭に設立された「ネゴヒャン・たばこ工場」に求めた。国家保衛機関系の外貨獲得事業として発展し、その後、酒類、食品、スポーツ用品、電子製品などへ事業を急拡大したという。
国家保衛省といえば、北朝鮮国内の思想統制や反体制監視を担う治安機関で、管理所(政治犯収容所)の運営も担っている。脱北者社会や韓国メディアでは「北朝鮮で最も恐れられる機関」の一つとして語られることが多い。
一方、米メディアNK Newsも2018年、「ネゴヒャンは単なる企業ではなく、多角化を進める北朝鮮型コングロマリット(複合企業)」と報じた。記事によれば、ネゴヒャンはスポーツウェア、食品、飲料、電子製品にまで進出し、平壌市内では高級コーヒー店も展開。韓国財閥の事業拡大型モデルになぞらえて紹介されていた。
特に象徴的なのが、金正恩総書記との関係だ。北朝鮮メディアに映る金氏が愛煙しているとされる「7・27」ブランドのたばこは、ネゴヒャン系企業の製品として知られる。最高指導者が公の場で好んで使うブランドという事実自体が、北朝鮮社会では一種の“品質保証”であり、企業の政治的地位を物語る。
では、こうした企業と女子サッカーはどのようにつながるのか。
北朝鮮スポーツ界では、軍や治安機関、主要省庁直属の体育団が競技力を支えてきた歴史がある。男子の4・25体育団(軍系)や鴨緑江体育団(治安機関系)が典型だ。ネゴヒャン女子サッカー団も、その延長線上にある存在とみられる。
朝鮮総連機関紙・朝鮮新報は近年、ネゴヒャン貿易会社がロシアで食品や酒類、たばこなどの商標登録を進めていると伝えた。制裁下でもブランド輸出を模索する動きとして注目されたが、裏を返せば、それだけ安定した資金力と組織基盤を持つ企業とも言える。
北朝鮮事情に詳しい関係者の間では、「だからこそ優秀な監督や代表級選手が集まる」との見方も少なくない。潤沢な支援、待遇、組織的後ろ盾があれば、選手育成環境にも差が出るからだ。
ネゴヒャン女子蹴球団の強さは、単なるスポーツの成功物語ではないのかもしれない。そこには、北朝鮮の権力機関、外貨獲得ビジネス、ブランド戦略、そしてエリート育成システムが交差する、独特の構図が透けて見える。








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