ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――3歳世代の頂点を決する競馬の祭典、GⅠ日本ダービー(東京・芝2400m)がいよいよ5月31日に行なわれます。大西さんは1997年にサニーブライアンで制していますが、ダービーというレースに抱く印象を聞かせてください。

大西直宏(以下、大西)非常に特別なレースですね。僕がダービージョッキーになれたのはキャリア18年目のことでしたが、デビューからそれまでの間、ずっと(ダービーでの)勝利を夢見ていましたから。

 今では海外のビッグレースにも多くの日本調教馬が参戦していますが、それでもほとんどのジョッキーや調教師、競馬関係者にとって、ダービー制覇がひとつの大願であることは変わっていないと思います。

――それほどの大一番で結果を出すためには、何が重要だと思われますか。

大西 世代の頂点を決める戦いに名を連ねるほどですから、出走各馬の能力が高いのは当然。勝つチャンスはどの馬にもあります。であれば、最終的に明暗を分けるのは"運"の部分が大きいと思っています。ダービーを制する人馬は、何か特別な、運命じみた追い風に背中を押されているんですよ。

 今にして思えば、僕とサニーブライアンもそうでした。当時のダービーでは公開枠順抽選が行なわれ、それに僕も参加。自らの順番が来た際には、「(勝った)皐月賞と同じ、揉まれない外枠がほしい」という思いから、「残りは全部(8枠)18番!」と祈りながら抽選機を回しました。

 そうして引き当てたのは、望んでいた18番の玉。

その瞬間、「これは運命が"勝て"と言っているんだ」と思いましたね。レースでもそう信じて疑わずに騎乗して、最高の結果を手にすることができました。

 他にも、中野栄治騎手とアイネスフウジン、柴田政人騎手とウイニングチケット......など、ここでは詳しく触れませんが、ダービーを勝つ馬とジョッキーには何か不思議な力が働くというか、勝利へ導く勢いのようなものが備わっていました。結果論かもしれませんが、後々振り返ってみれば「(あの馬、あの騎手は)勝つべくして勝ったんだな」と思える例は少なくないです。

――ダービーは古くから「最も運のある馬が勝つ」と言われています。大西さんはそれを、実際に身をもって体感しているのですね。では、そうした運の要素を踏まえて、今年のダービーで大西さんが本命視している人馬を教えてください。

大西 クラシック初戦のGⅠ皐月賞(4月19日/中山・芝2000m)の2着馬、リアライズシリウス(牡3歳)です。というのも、鞍上の津村明秀騎手には今年、非常に強い追い風が吹いているように感じるからです。

 津村騎手は今年、すでに重賞を5勝。昨年までのキャリア22年間で記録した重賞勝利数が計22勝ですから、過去を上回る驚異的なペースで結果を積み上げていることになります。そのような最高潮の時期に、リアライズシリウスという大器と出会えたことには、必ず意味があるはずです。

 もともと騎乗の技術は現役屈指と見ていて、個人的に高く評価していたジョッキー。最近は勝利への執念も加わったことで、大きな成果を挙げているように思います。ダービーでの手綱さばきにも注目しています。

――津村騎手は先週のオークスでも、10番人気のリアライズルミナスに騎乗して"あわや"というシーンを演じました(結果は4着)。同じ舞台での躍進が大いに期待されますが、そんな津村騎手騎乗のリアライズシリウスのライバルとなる馬、大西さんが他に目をつけている馬はいますか。

大西 皐月賞でリアライズシリウスを下したロブチェン(牡3歳)を無視することはできません。2走前のGⅢ共同通信杯(2月15日/東京・芝1800m)の内容から、府中の長い直線も苦にはしなさそうで、実力上位の一角でしょう。

 3番手には、ライヒスアドラー(牡3歳)を挙げます。皐月賞では、差し勢で唯一馬券圏内(3着以内)を確保。前目のインでロスなく運んだ馬が好走するなか、外から追撃してみせた点も強調材料です。

――やはり中心となるのは、皐月賞の上位3頭。そうなると、それらを脅かす伏兵候補も皐月賞組となりますか。

大西 いえ、皐月賞ではこの上位3頭が抜けて強かったと見ています。ですから、一角崩しを期待するなら、これらとの直接対決がない、別路線組に目を向けたいところ。注目しているのは、3戦3勝の無敗馬コンジェスタス(牡3歳)です。

【競馬予想】日本ダービーを勝つには「運」が重要 それを体感し...の画像はこちら >>

――前走では、GⅡ京都新聞杯(5月9日/京都・芝2200m)を快勝。確かに無傷の3連勝と、まだ底を見せていないのは魅力です。

大西 京都新聞杯では、2分9秒9という勝ち時計をマーク。これは、3歳馬としては非常に速いタイムです。現代のスピード競馬に高い適性を示していることは明らかで、その点は大きなポイントです。
    
 同レースで2着に退けたベレシートも素質の高い馬。残念ながら、同馬はダービー出走を直前で回避することになってしまいましたが、無事に参戦していたら上位に推す声も多かったでしょう。そういった強い相手にもしっかりと競り勝ったことも高く評価したいですね。

 鞍上の西村淳也騎手も現在、全国リーディング5位。

今年、好調なジョッキーのひとりです。その勢いも考慮して、コンジェスタスをダービーの「ヒモ穴」に指名したいと思います。

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