日本代表は31日、北中米W杯前、国内最後の一戦となるアイスランド戦(MUFG国立)に臨む。30日の前日会見では、森保一監督(57)がDF吉田麻也(37)の先発起用を明言。

22年カタールW杯のクロアチア戦以来、約3年半ぶりとなる代表のピッチ。それが“ラストマッチ”になる可能性を誰もが感じていた。

 「引退ではなく、ひと区切りだということにしておいてください。今持てるものをこの10分にかけて、W杯のつもりで戦います」

 この日の練習後、取材に応じた吉田は、時に笑い、時に感傷的な表情を浮かべながら、胸中を明かした。指揮官から伝えられたのは「先発で10分間」の限定出場。歴代3位の通算126試合にわたり代表を支え、カタール後も4度目のW杯出場を諦めなかった男に寄せられた最大限の敬意だった。

 吉田が招集を受け入れた理由は明確だ。

 「一つは森保さんと日本サッカー界の気持ちを受け止めるということ。もう一つは、W杯で勝つ確率を上げるために、自分の持っているものをチームに注入するため」

 合宿中、ピッチに立てば一人の選手としてギラギラとした執念を見せ、一歩引けば、ロッカーや食事会場で若い選手たちが発する「空気感」を指揮官にフィードバックした。

 「監督やスタッフが外から見るものと、選手がピッチで感じるものは違う。(中村)俊輔さんや長谷部(誠)さん、名波(浩)さんという歴代のリーダーがスタッフにいて、さらに僕が加わる。総力戦でこのW杯を戦っていこうという、監督の意思の表れだと思う」

 日の丸から遠ざかったこの数年、喪失感と向き合ってきた。

「恋愛じゃないけど、失ってこそ気づくものがある。いかに自分が恵まれていたのか。やっぱりこれ以上の仕事はない。最高だよな、この仕事は」。国を背負う重みと歓喜を誰よりも知る男は、今、あらゆる感情を抱えて国立のピッチへ向かう。

 「日本サッカーにたくさんのものを与えてもらった。今度は自分が何を与えられるのか。それでも、練習で交代させられれば悔しいし、自分が出たいという思いはある。その悔しさを押し殺さずにやってきた。明日は僕のW杯。ギラギラしたものをぶつけたい」

 未練も、プライドも、すべてをはき出すたった10分間。だが、背番号22が刻んできた歴史の重みと、未来へ託すメッセージを証明する時間になる。

(金川 誉)

編集部おすすめ