北朝鮮の官製メディアが、幹部たちに向かって「もっと礼儀正しく、もっと謙虚に」と説き始めたという。韓国メディア「サンドタイムズ」の25日付の報道によれば、北朝鮮内閣機関紙「民主朝鮮」は25日、幹部の言葉遣いや態度に苦言を呈し、「住民に高圧的な態度を取るな」「電話で怒鳴るな」「乱暴な言葉を使うな」と細かく指導したという。

記事は、まるで企業のコンプライアンス研修である。役職が高くなるほど謙虚であれ、部下を尊重せよ、女性や高齢者には礼儀を持て、服装にも気を配れ──。ここだけ読めば、どこかの市民講座か自治体の啓発ポスターにも見える。

だが、少し立ち止まって考えてみたい。北朝鮮で「礼儀と謙虚さ」から最も遠い場所にいる人物は誰か。

もちろん、地方工場で住民を怒鳴る下級幹部ではない。答えはあまりに明白だ。最高指導者である金正恩総書記その人である。

金総書記の公開叱責シーンは有名だ。軍や地方幹部を前に腕を振り上げ、指差し、険しい表情で長時間説教する映像は国営メディアでも珍しくない。ターゲットにされた幹部は、公開批判から失脚、時には消息不明へと至る。

民主朝鮮は「職位が高いほど自らを低くしなければならない」とも説いた。

これは北朝鮮社会ではかなり勇気のある文章に見える。なにしろ、この国では最高指導者が果てしなく持ち上げられ、幹部たちは一歩後ろを歩き、椅子の高さまで気を遣う。「自らを低くする」という概念は、ほとんど比喩の世界に属している。

もっとも、現場の幹部らにも事情はある。地方建設、「地方発展20×10政策」、農村支援、生産動員――経済難の中で住民への負担ばかり増えれば、不満はまず現場幹部に向かう。怒鳴る、威張る、脅す、便宜と引き換えに賄賂を求める。そうした横暴が積もれば、やがて「党への信頼」に傷がつく。だからメディア総出で「笑顔で接しよう運動」を始めざるを得ないのだろう。

しかし国民から見れば、こうも思うのではないか。

「まず一番上から始めてはどうか」と。

北朝鮮メディアの記事は、体制維持のための「ガス抜き」であると同時に、読みようによっては実に高度なブラックジョークでもある。礼儀と謙虚さを説く国で、最も怒鳴る資格を持つ人物だけが、その教えの適用外に見えるからだ。

もし民主朝鮮が次回、「最高位ほど最も礼儀正しくあるべきだ」とまで書けたなら、それは北朝鮮メディア史に残る革命的な一歩になる。もちろん、その記事を書いた記者が翌日も出勤していれば、の話だが。

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