ここから、「会話能力」と「読み書き能力」は関連しているものの、脳の異なる機能ではないかとの予想が成立する。相手の表情や口調、身ぶりを(無意識に)評価しながら、共感や反発しつつ会話を成立させる能力はすべてのひとが生得的に身につけているが、文字のみでコミュニケーションする能力には(生得的な)個人差がある。ネットのコミュニケーションは進化論的にきわめて「異常」な環境で、それに適応できないひとが「トロール」化するのではないだろうか。
ちなみに、ディスレクシアは日本人(アジア系)には少なく、白人(ヨーロッパ系)に多い。アメリカの調査では、白人よりも黒人(アフリカ系)でディスレクシアの比率が高いこともわかっている。近刊の『もっと言ってはいけない』(新潮新書)で、大陸系統(≒人種)によって異なる遺伝的特徴を持つようになった可能性を指摘したが、ディスレクシアの分布は「文字文明」の歴史に重なっている。
もっとも邪悪なトロール「ホルボーンじいさん」とは? バートレットが『闇ネットの住人たち』で紹介するネットのトロールのなかで、強烈な印象を残すのは「ホルボーンじいさん(Old Holborn)」だ。デイリー・メール紙から「イギリスでもっとも邪悪なトロール(Britain's vilest troll)」の称号をもらった男性で、「エセックス出身の、身なりの良い言葉巧みな中年男で、本人の話では、コンピュータプログラマーや