通常の納豆は、パック内のフィルムの上に小袋に入った液体たれが入っているが、このたれをゼリー状にすることで、小袋とフィルムを無くしたのが、「金のつぶ あらっ便利! におわなっとう3P」シリーズ(ミツカン/税込165円)だ。
この新しさが消費者の支持を集め、発売2ヵ月でシリーズ合計6000万食を突破。売上目標に対しても約110%と、好調な販売実績を保っている(いずれも11月初旬現在)。
ゼリー状の“とろみたれ”は箸でつまむことができ、納豆とかき混ぜると液状になってよくなじむ。また、ゼリー状にすることでだしの風味を封じ込め、香りが引き立つように仕上げている。
納豆自体も、特殊な納豆菌を使うことで、納豆特有の臭みのもとである低級分岐脂肪酸だけを抑え、納豆嫌いの人でも食べやすい。
また、たれ小袋とフィルムをなくすことで、家庭ゴミを年間約45トン(全体)、包材製造時のCO2を5.86%削減し、エコの観点でも貢献している。
実はこの成功の裏には、かなりドラマティックな開発エピソードがある。社長の大号令の下、納豆の新たなヒット商品開発の至上命令が出された。新機軸を打ち出すようなアイディアが社内でなかなか生まれない中、ある社員の家族が、食事中に納豆のたれを手にこぼしたことがヒントとなった。
このハプニングが契機となり、各部門の専門スタッフが集結したのが2006年冬。プロジェクトを本格的にスタートさせ、実に100種類以上のたれと容器を試作した結果、小袋を必要としないたれの製造に成功した。そして、「たれ小袋が開けづらく、食卓や服を汚す」「フィルムで手やテーブルを汚す」といった消費者の不満がきれいに解消されたのだ。
簡単・便利で美味しく、環境への配慮も実現した新・納豆は、徹底した消費者目線の開発がヒットを生んだ。不況や食品偽装問題、食の飽和など、逆風ばかりがクローズアップされるマーケットであるが、この商品の成功は業界に大きなヒントを提起しているといえよう。
(田島 薫)
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