穴吹は2007年にマンション供給戸数で大京を抜き全国首位、翌08年には3位となるなど大手の一角を占める。沖縄を含む全都道府県に進出、売り上げの九割以上が地方都市という他の大手ディベロッパーには見られないビジネスモデルで成長してきた。
地方都市はマンション市場としては弱いはずだが、穴吹は地場のゼネコンなどを協力会として組織し、そのエリアでマンション施工を優先的に振り分ける代わりに、ゼネコン社員に物件の販売をも委託するという仕掛けを施した。結果的に、「穴吹が供給する中規模の戸数の物件であれば、下請けなども含む建設関係会社を動員すれば売り切れる」(業界関係者)。このため他社が見向きもしないようなエリアでもマンションの販売を伸ばすことに成功してきたのだ。
だがこの“妙手”が08年のマンション不況で逆回転した。地方で販売を行なっていた競合の新興ディベロッパーが軒並み破綻、この在庫がたたき売られたり再販物件として安値で放出された。こうした傾向は特に地方都市で強く、競合物件の価格下落に合わせ安売りを行なわざるをえない穴吹は収益が急速に悪化した。
09年3月期は、販売戸数こそ微減にとどまったものの、販売期間が長期化したことで収益が悪化し、138億円の当期損失に陥った。社員の約1割に当たる早期退職者募集、強みとしてきた全国網の大幅縮小など、徐々に追い詰められた。
今回の破綻が及ぼす影響は大きい。物件引き渡し前の顧客も全国に広がり、建設業者を中心とした取引業者も2060社に上る。このため民事再生法ではなく会社更生法を選ばざるをえなかった。ディベロッパー破綻の“一巡”でひと息ついていた建設業界に再び冷や水を浴びせた格好だ。
独自性で比較的堅調な営業を続けてきたと見られていた穴吹の破綻に他のディベロッパーも衝撃を受けている。「今後、マンションディベロッパーは首都圏で営業を行なう大手や財閥系しか生き残れないことがこれではっきりした」とあるディベロッパー首脳は言う。長引くマンション不況は、業界の寡占化をますます推し進めることになりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)
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