エチオピアでも近年はタクシーアプリが普及し、現地在住の外国人はアプリでタクシーを呼ぶようだが、今回は使ってみる機会はなかった。
エチオピアは深い崖によって隔てられた80以上の民族集団が共存する多民族国家エチオピアはアフリカ大陸を南北に縦断する大地溝帯(グレート・リフト・バレー)に位置し、紅海とアデン湾によってアフリカとアラビア半島に分かれる。約1000~500万年前にマントル対流が大地溝帯周辺の地殻を押し上げ、アディスアベバのあるエチオピア中部から北部にかけては標高2000メートルを超える高地になった。ローマ(1960年)と東京(1964年)のオリンピックのマラソン競技で2大会連続優勝を果たしたアベベ・ビキラが有名だが、エチオピアが優れた長距離ランナーを輩出するのは心肺機能が高地に適応したためだ。
エチオピア高原は降水量が多く、平均気温も16度と冷涼で、ナイル川(青ナイル)の水源となるタナ湖など豊富な水資源を擁している。それにもかかわらず歴史上、たびたび旱魃の被害を受けてきたことから、「誰がエチオピアの水を奪っているのか?」が問われることもある。
だが飛行機から地上を見ると、この謎はすぐに解ける。下はアディスアベバ近郊だが、地表の浸食が激しいため、切り立った崖と崖のあいだにわずかに平らな台地が残っている様子がわかる。
こちらは北部の都市ラリベラ近郊で、広い平地に街がつくられているが、主要道路からすこし行くとたちまち険しい崖に突き当たる。こうした地形では、隣の台地に水源があったとしても、その水を引いてくることができない。この物理的制約によって、豊富な水資源がありながらもしばしば水不足に悩まされるのだ。