『ノーサイド・ゲーム』池井戸潤氏インタビュー 「劣勢にあるときこそ、真の力が試される」

 「まったくラグビー経験がない人がGMに指名されることは、現実にはありません。でも、君嶋を主人公に設定することで、ラグビーに馴染みのない人でも、彼と同じ素人目線で物語を読んでいける。かなり効果的だったのではと思います」

 ラグビー小説といっても、そこは池井戸作品。会社という組織の中に置かれたひとりの人物の運命のボールがラグビーというスポーツのフィールドへと鮮やかに転がり込むことで、読者はあたかも自分が新人GMの君嶋になったかのように物語へと引き込まれる。君嶋は会社員としての誇りを懸け、チームは復興を目指し、一心同体となって再起を図るのだが、ここで思いもかけない変節が作者である池井戸氏の側に生じたのだ。

 「最初はチーム再生の物語のラインに乗った、わりとストレートなラグビー礼賛小説だったんです。それが(原稿用紙400字詰め換算で)600枚くらい書いたところで、どうも自分の中で納得がいかないモヤモヤが残って。結局、それをいったん全ボツにしました」

「One for all, All for one」が通用するのは日本だけ?

 「最初はもう少し日本のラグビーを信じていたんです」と池井戸氏。わだかまりの最初のきっかけは、ラグビーにまつわる、ある“定説”が覆ったことだった。

 「ラグビーといえばよく聞くのが、『One for all, All for one』(=ひとりは皆のために、皆はひとりのために)という有名なフレーズ。でも調べてみたら、この言葉をラグビー用語として使っているのは日本だけらしいんです。ラグビーの本場であるニュージーランドやオーストラリアのラグビー関係者に尋ねたら、「それって三銃士(アレクサンドル・デュマの小説)のフレーズでは?」と。タイトルに使った『ノーサイド』(=試合終了後は敵も味方もなくなり、お互いの健闘を称え合うというラグビーの精神を象徴する文句)という言葉も日本では多くの人が知っていますが、世界ではもうラグビー用語としては使われていないこともわかった。断言はできませんが、どうやらラグビーのイメージは日本で独自の進化を遂げているようですね」
 
 さらに取材を行う中で心に募っていったのは、現状への疑問だった。


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