「カカクコム」比較検討から予約・決済に事業領域を拡大 サービスそのものの提供も

「価格.com」「食べログ」などを運営するカカクコム<2371>は、これまで比較検討が中心だった事業内容を、決済なども行える「予約・決済」事業や、自らが実際にサービスを提供する「サービス提供者」事業にまで領域を拡大する。

成長領域への投資を強化し売り上げ、利益の年率2ケタ成長を実現するとの方針に沿ったもので、目標達成のためにM&Aなどの手法を活用する。

AI、グローバル展開、B2Bなどの分野が候補に

カカクコムは購買支援サイトの「価格.com」事業、レストラン検索サービスの「食べログ」事業、求人情報の「求人ボックス」事業、旅行・移動、不動産、ライフスタイル・エンタメ情報などの「インキュベーション」事業の四つの事業を手がけている。

全売上高の40%を占める「食べログ」事業に関わる外食市場は、コロナ禍の影響が薄らぐとともにインバウンド(訪日観光客)需要の拡大などもあり、回復基調にある。

また全売上高の30%ほどの「価格.com」に関わる価格比較サイトの世界市場は、海外の市場調査レポートの販売を手がける調査会社によると、オンラインショッピングの増加などに伴い、2030年には2023年比10%強の安定した成長が見込まれるという。

これら中核事業の「食べログ」や「価格.com」の成長を持続しながらM&Aなどによる投資で非連続な成長を目指すというのが同社の戦略だ。

すでにショッピング分野で「価格.com」をはじめ「キナリノ」「LiPLUS」の3サービスを展開しており、外食分野では「食べログ」を、求人分野では「求人ボックス」を、不動産分野で「スマイティ」を、旅行・移動分野で「icotto」「4travel」「Time Design」「LCL」を運用しており、今後はこれらサイトのノウハウを活用して業種の幅を広げる。

また、これらサイトは、比較検討を事業の中心としているが、今後は予約・決済が行えるサービスを追加する計画で、現在の事業の経営資源を活用して、早期の立ち上げを目指す。

さらに比較検討、予約・決済だけでなく、サービスそのものを提供する事業にも参入する考えで、AI(人工知能)などの技術の活用やグローバル展開、B2B(企業間取引)などの分野を候補として上げている。

これら目標を達成するのに、自社で新規事業として取り組むのと並行して、M&Aを活用する計画で、新規事業の開発やM&Aなどの成長投資に今後5年間(2026年3月期~2030年3月期)に約1080億円を投じる。

年平均13%の成長を

カカクコムの2025年3月期は「価格.com」事業、「食べログ」事業、「求人ボックス」事業、「インキュベーション」事業の旅行・移動領域が好調に推移したことから、売上高は784億3500万円(前年度比17.2%増)と2ケタの増加となった。

営業利益も売り上げの増加に伴って、292億9300万円(同13.5%増)と2ケタの増加を達成した。

今後5年間は既存事業の成長とM&Aなどの成長投資によって、売上高、営業利益ともに2025年3月期比年平均13%の成長を計画しており、2030年3月期に売上高1430億円、営業利益530億円を見込む。

生活領域で事業展開を本格化

これまでのM&Aについては、直近では2025年4月に不用品回収や庭の手入れといったハウストラブルの解決など、生活領域の幅広いジャンルでユーザーと専門人材のマッチングを行うプラットフォーム(基盤)を提供しているLiPLUSホールディングス(東京都渋谷区)を子会社化した。

同社の子会社化を機に「価格.com」内に生活領域ジャンルの総合型サイトを新設し、生活領域ジャンルという大市場での事業展開を本格化する。

また、2025年1月には、買い物スポット情報サイト「Pathee.com」を運営する子会社のPatheeを譲渡した。

2022年10月にPatheeを子会社化したが、赤字が続いていたことから、売却を決めた。

次に打ち出す非連続な成長につながるM&Aとは、どのようなものになるだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一

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