日曜よる9時からのドラマ『ノーサイド・ゲーム』第7話でサイクロンズへ衝撃の移籍を決めた里村亮太。
アストロズ唯一の日本代表でチームの花形選手である里村の移籍はチーム全体を揺るがす大事件だったが、「最高のパフォーマンスをあげたい」と望むアスリートにとっては苦渋の決断であり、その「リアルさ」が視聴者からの大きな共感を呼ぶ『ノーサイド・ゲーム』の魅力でもある。
演じているのは、佳久創さん。実際に明治大学在学中に日本選抜メンバーに選ばれた経験を持ち、選手引退後は俳優に転身し、CMや話題作への出演が相次いでいる。連載8回目となる今回は、そんな佳久さんにドラマにかける思いを語ってもらった。
――佳久さんは、明治大学、トヨタ自動車でラグビー選手として活躍しました。
怪我で引退し、これからどうしていこうかと、燃え尽き切れない思いを抱えていました。そんな時、いま所属している事務所のオーディションを受けたんです。合格したら上京して役者に挑戦する。不合格ならきっぱりと諦めて、トヨタ自動車で会社員を続ける…。そして2017年8月に会社を退社しました。
それからずっと、役者の道を選んだ時に心配をかけた両親や元職場の方に自慢してもらえるようになりたいと思ってきました。そして今回、日曜劇場という大舞台で、ラグビーのドラマができることになった。本当に自分は幸運だと思います。
――演じている里村と自分に重なる部分はありますか?
里村は僕とは正反対で怒りっぽいんです。ただ、真剣にラグビーと向き合う熱い奴でもある。チームではカリスマ性のある存在で発言も多い。そのため僕も、普段から皆の前でどんどん発言しようと心がけています。
――君嶋隼人を演じる主演の大泉洋さんはどんな方ですか?
大泉さんとアストロズのメンバーは、ドラマと同じようにどんどん距離が近づいてきていると感じます。距離が近づくにつれ会話も増え、楽しくやらせていただいてます。大泉さんはとてもお忙しい方なのに、周りに対する気遣いが常にある方。すごいなーといつも思っています。
――チーム率いる柴門琢磨監督を演じる大谷亮平さんはどんな方ですか?
大谷さんは渋い方なのかなと思っていたら、実際にお会いしてみるとすごく明るい方で、僕らとふざけ合ってくれます。演技に入るとガラッと雰囲気が切り替わり、格好いい監督になります。柴門監督がこれからどう戦って、どう勝っていくのかは、僕自身も興味があります。
――アストロズのなかで、リーダーシップを取るのは誰ですか。
キャプテンの岸和田徹役の高橋光臣さんは、俳優としてのキャリアも長いので、現場のことが何もわからなかったアストロズのメンバーを仕切ってくれる、まさにキャプテンという感じです。ラグビーシーンでは、浜畑譲役の廣瀬俊朗さんなど、役柄と同じポジションを経験している元選手の方が中心になって動き方などを話し合っています。自分で言うのはおこがましいのですが、映像を見返すと皆、本当に格好よく動けていると思います。
スタッフの方々も一生懸命にやってくださるので、僕たちアストロズのメンバーもそれに応えようという雰囲気があります。ラグビーのタックルバックなど、重たい道具の持ち運びはスタッフさん任せにせず、僕らも手伝うようにしたり、お互いに助け合っています。
――まるで本当のチームのようです。佳久さん演じる里村のポジションはスクラムハーフ。いいシーンが撮れるように自主トレを欠かさないそうですね。
僕は選手だった頃、ボールを持って走るウィングというポジションでした。ドラマのオーディションを受ける時にマネージャーから「スクラムハーフはできる?」と聞かれました。「…できます」と答えはしたんですが、スクラムハーフはキック、パスがきちんとできないと成り立たないポジション。
そこで撮影前の練習で、スクラムハーフの経験者に場面ごとの動き方を教えてもらいました。でもそれだけでは足りなくって、佐々一役の(林家)たま平たちと数名で自主練を積みました。練習には元選手の共演者も来てくれて、本当にありがたかったです。
誰が見ても違和感のない動きがしたいと思っているので、家に帰ってからも、一緒に住んでいる兄とパスの練習をしています。だから現場で「うまくなってるね」と言われると嬉しくなります。
――どんなふうに作品を見てほしいですか?
福澤監督はラグビーシーンにこだわりがあるので、僕たちもそれに応えるべく、意見を出し合いながら撮影を進めています。プライドを持って演じているので、自分たちのシーンを見るのを皆さんと同じように、僕たちも放送日まで楽しみにしています。
第1話では、相手のタックルに突き上げられ、地面に落とされる場面がありました。1度やられるだけでも痛いのですが、いろいろな角度から撮るために何度も、何度も、地面に落とされました。相手の肩がみぞおちに入って呼吸ができなくなったりしながらも、「大丈夫です」と立ち上がり、またタックルされる。あれは本当にきつかったです(笑)。
※本連載は雑誌『TV station』との連動企画です。
写真提供:TBS