『週刊ダイヤモンド』4月18日号の第1特集は、「本当は怖い働き方改革」です。4月1日に働き方改革関連法の第2弾が施行されました。

美辞麗句が並び、みんなが幸せになるイメージばかりが膨らむ「働き方改革」。長年染み付いた働き方を変える改革が、生易しいものであるわけがありません。働き方改革とコロナ危機のダブルパンチで残業代が蒸発し、テレワークも絡んだ「新型リストラ」が始まります。

テレビ会議に招集されず
PCステータスは常に「待機中」

 今回テレワークを体験した多くのビジネスパーソンは気付いているだろう。オフィスに来なくてもできる仕事はたくさんあり、オフィスに来るだけで仕事をしていない人がたくさんいるということに。

 ある経団連幹部は「コロナ危機をきっかけにテレワークを利用したリストラが加速する」と断言する。

経団連かいわいや、経営者、幹部の間で、これがよく話題に上るようになっているのだ。

 テレワークはITツールを使って仕事を進める。勤怠管理だけでなく、働きぶりもより精緻にデジタルデータで明らかにできる。アナログな「追い出し部屋」などから進化した、「新型リストラ」がいよいよ始まるのだ。

 大手石油元売り会社の若手社員は、気付いてしまった。テレワーク導入によりテレビ会議が増える中、これまで社内での打ち合わせには参加していたのに、テレビ会議になると呼ばれなくなったメンバーがいることを。

「怖いよな。本当は必要なかったと切り捨てられたんだもの」と、周囲とささやき合った。

 身内だけの会議は、とかくだらだらしやすいものだ。これがテレビ会議になると、余計な会話が一切そぎ落とされ、参加メンバーには建設的な発言が求められる傾向にある。

 じかに顔を合わせる会議であれば、座っているだけでも存在は目に入る。それがテレビ会議になると、全く発言しない人は存在が認識されにくくなる。

揚げ句、存在する価値がないと評価され、呼ばれなくなるというわけだ。

 テレワークなどの新たな働き方は、リストラ予備軍の姿を変えていく。

 従来の予備軍は社内会議に呼ばれなくなると自席に根を張り、ソリティア(ウィンドウズの中に入っているトランプゲーム)の腕ばかりが磨かれる者もいた。予備軍入りか否かは本人にも周囲にも分かりやすかった。

 これに対し、新たな予備軍は、いつの間にかテレビ会議に呼ばれなくなるなど、気付きにくいかたちで仕分けられるから恐ろしい。

「アベってる」。

この言葉はコンサルティング業界の隠語で「available(待機中)」をもじったものだ。テレワーク導入などが進む組織はITツールで各社員の予定表を共有するようになり、「暇な人と忙しい人が一目瞭然」(コンサルティング業界関係者)。

 ステータスが常に「待機中」なのは、誰からもプロジェクトに招集されず、暇を持て余した「アベってる人」。つまりリストラ予備軍である。

 テレワーク時代は仕事の剝がされ方も変わる。

 独SAP社の統合基幹業務システムを採用しているある外資系企業では、リストラ予備軍にはテレワークになってもSAPのアカウントを与えない。

これは「仕事をしなくていい」と通告したようなものだ。

 仕事が与えられないリストラ予備軍は、テレワークでひたすらeラーニング。「在宅勤務」が新手の「追い出し部屋」と化すのだ。