コロナで青息吐息の百貨店
資金繰り余裕度を確認しよう

 新型コロナウイルスの感染拡大で、百貨店が青息吐息だ。緊急事態宣言の解除時期が延期されて、多くの店舗で休業が続いている。

 そこで、今回は「『コロナに強い』百貨店ランキング」と題して、企業の短期的な支払い能力を示す財務指標である「流動比率」が高い順に、上場している百貨店をランキングした。

 流動比率は「流動資産÷流動負債×100」で求める財務指標で、1年以内に返済する必要がある負債に対して、1年以内に現金化できる資産がどれくらいあるかを示すもの。この流動比率によって、百貨店における資金繰りの余裕度の高さを探った。

 望ましい水準は、業種によっても異なるが、150~200%程度が目安とされる。流動比率は、2019年1~12月期の有価証券報告書を基に計算した。

 それでは、早速ランキングを見ていこう。

1位の丸井は326%
2位以下は100%未満

「コロナに強い」百貨店ランキング1位は丸井グループで、流動比率は326.1%。流動負債の1964億円に対して、流動資産は6404億円となっている。

 流動資産には現金や普通預金のほか、売掛金や受取手形、有価証券や商品、製品などが含まれる。

 売掛金や受取手形は回収しなければ、商品や製品は売れなければ、現金化できない。最も安全性が高い現金同等物を見ると、丸井は467億円を保有している。

 今回ランキングの対象となった上場12社の中で、同社の流動比率の水準は群を抜いて高い。

自社カードによる割賦販売が事業の柱となっており、他社と比べて金融業の色彩が強いことが影響している。

 丸井は緊急事態宣言を受けて、4月8日から全30店舗で臨時休館することを発表している。静岡丸井と静岡モディは5月14日から営業を再開するが、それ以外は未定だ。

 2位は高島屋で、流動比率は88.1%だった。なお、高島屋は決算短信で20年2月期決算を発表しているが、今回のランキングは有価証券報告書ベースで作成しているため、19年2月期を最新データとして掲出した。

 決算短信ベースの20年2月期で流動比率を計算したところ、72.3%と、1年前と比べて低下していることが分かった。

 ところで今回のランキングでは、2位以下の百貨店の流動比率は、いずれも100%を切っている。前回の「コロナに強い」アパレル企業ランキングでは、ランキングの対象にしたアパレル企業59社のうち、42社が150%超だった。

 小売業は一般的に、流動比率が他の業態と較べて低い傾向がある。現金販売が多いため、売掛金や受取手形(=計算式の分子)が少額になることが主因だ。

 ちなみに、今回1位となった丸井の19年3月期の流動資産(6404億円)の内訳を見ると、割賦売掛金が4282億円で7割弱を占めた。ビジネス形態の違いが流動比率に表れている。

 いずれにせよ、コロナの影響で売上高が蒸発する環境下では、入ってくる現金が細るわけで、流動比率が低い百貨店はそれだけ資金繰りが厳しくなる。

 高島屋の4月の売上高は、前年同月比で74.7%も減少した。同社は、コマーシャルペーパー(返済まで1年未満の短期資金を調達するために発行する有価証券。機動的な発行が可能)で300億円を調達するなど、資金の確保に動いている。

 3位は阪神阪急百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリングで、流動比率は86.2%だった。4月の売上高は前年同月比で80.5%減少している。

(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

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