今回は、上場企業の有価証券報告書に記載された平均年収のデータを使って、「中部地方で年収が高い企業ランキング」を作成した。

 なお、このランキングでは、愛知県を除く中部地方(新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県)に本社を置く上場企業を対象とした。

本社所在地はダイヤモンド社企業情報部調べ。単体の従業員数が20人未満の企業は除外している。対象期間は、2019年6月期~20年5月期。

 早速、ランキングを確認していこう。

1位は年収1216万円!
山梨県忍野村の世界的メーカー

 1位となったのは、工作機械の頭脳部分ともいえるNC(数値制御)装置で世界首位のファナック。年収は1216万円だった。自動車向けの多関節ロボの分野でも強い世界的メーカーだが、本社は山梨県忍野村にある。

 富士通のNC部門を分離してできたファナックの社名は、「Fuji Automatic NUmerical Control」の頭文字を取ったものだ。技術開発に専念するため1984年に本社を東京都日野市から忍野村に移した。忍野村は富士山のふもと、標高900mを超す高原盆地に位置する。富士山の伏流水が水源の湧水池「忍野八海」が観光地として有名で、世界文化遺産である富士山の構成資産の一部でもある。

 なお、事実上の創業者である稲葉清右衛門氏が今年10月、老衰のため95歳で死去した。

稲葉氏は日本企業で初めてのNC装置の開発を主導。続く産業用ロボット事業によって一代で世界的な企業に育て上げた。

 富士通から独立後のファナックは、外への情報発信に消極的で、マスコミの取材もほとんど受けないという秘密主義の会社として知られていたという(連載『The Legend Interview不朽「ファナック創業者・稲葉清右衛門が80年代に熱く語った産業用ロボットの未来」』より)。もっとも80年代には、稲葉氏はたびたび「週刊ダイヤモンド」に登場し、ざっくばらんにインタビューに答えていた。

 このほか山梨県の企業では、上野原市に本社を置き、半導体の研究開発・製造を行うトリケミカル研究所が758万円で9位となっている。

セイコーエプソンは年収747万円
西濃運輸の親会社は714万円

 2位は、楽器・音響機器メーカー大手のヤマハ(静岡県)で年収は948万円。同社発祥の二輪世界大手、ヤマハ発動機は745万円で14位に入った。このほか静岡県の企業では、小型精密部品の加工を柱とするスター精密が810万円で4位、静岡銀行が736万円で15位となっている。

 3位はTBS系列局の新潟放送で、年収は818万円。新潟県のゼネコン、福田組は803万円で、6位にランクインした。

 5位の三谷商事は804万円だった。福井県が本社の卸売業で、セメント・生コンクリートの販売量で「日本一」をうたっている。

そのほか同県では福井コンピュータホールディングス(756万円)が10位にランクインしている。

 7位は、長野県に本社がある電気計測器の中堅メーカー、日置電機で779万円。長野県のメーカーはトップ20に6社が入っている。医薬品中堅のキッセイ薬品工業(754万円)が11位、インクジェットプリンターのセイコーエプソン(747万円)が13位となっている。

 8位は、和井田製作所で759万円。岐阜県で最も年収が高い上場企業となった。そのほか同県ではセイノーホールディングス(714万円)が20位に入っている。「カンガルー便」が愛称の西濃運輸などを傘下に持っている。

 今回、年収が650万円を超えた企業は42社だった。本社所在地の都道府県別に集計すると、静岡県に拠点を置いている企業が12社で最も多かった。2番目に多かった県は、長野県で10社。3番目は三重県で5社だった。

 ランキング完全版では、11位以下の計200社を掲載しているほか、平均年収が650万円を超えた42社の業種別の傾向について分析している。ぜひチェックしてみてほしい。

(ダイヤモンド編集部編集委員 長谷川幸光)

編集部おすすめ