海外のスポーツ選手から
引退後の生き方について学ぶ

 ファンの声援を背にグラウンドを駆け回るアスリートたち。多額の年俸を稼ぎ、引退後もさぞ華やかな人生を送るのかと思いきや、現実はそう甘くはないようだ。

 元U​23日本代表で、社会人ラグビーの名門・三洋電機ワイルドナイツの初代キャプテンを務めた福永昇三さんは、入部当時、「今後のために大型免許でも取っておけ」と言われ、将来の生活に何の保証もないことを知ったという。

 そんな福永さんは09年、現役生活にピリオドを打ち、第2の人生を歩み始めた。「この先どうするの?」と心配する周囲の声をよそに、その暮らしは悠々自適そのもの。なぜなら、福永さんには現役時代に購入した横浜の区分マンション1戸と群馬と栃木のアパート2棟から、毎月60万円を超える家賃収入があるからだ。引退後を見越して臨時収入は繰り上げ返済に回したため、アパートの残債はゼロ。今後はこれらの物件を担保に都内の物件購入も考えている。

「家賃収入がなければ、ボロボロの体で現役を続けていたかもしれません。アパートのおかげで家族にも苦労をさせずにすんでいます」(福永さん)

 堅実に見える福永さんだが、もともと資産運用に興味があったわけではない。むしろ、日本の多くのスポーツ選手と同様に、高級腕時計や外車を買って派手に遊びたいと考える普通の選手だった。

 ところが、ニュージーランドから来た外国人助っ人選手に、「そんなものは1円も生まない。それより将来のことを考えろ」とアドバイスされ、考え方が変わった。

 海外のスポーツ選手は現役時から投資や副業で資産を増やし、引退後に投資家やビジネスオーナーとして活躍する人が多い。

そんな彼らに、刺激を受けたのだ。

 具体的に不動産投資を始めたきっかけは、試合中に大ケガをして入院していた26歳の時、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んだことだ。退院したその足で不動産屋を訪ね、横浜のファミリータイプの区分マンションに買い付けを入れた。家賃16万円からローン6万円を引いた10万円が毎月通帳に積み上がっていくのを見て、「不動産投資って面白いなあ」と実感したという。

知識不足で苦労している
スポーツ選手をサポートしたい

 その後、チームの本拠地に近い群馬と栃木にアパートを1棟ずつ購入。物件購入のコツは、インターネットに頼らず自分の足で探すことだ。よい情報はネットに載る前に買われてしまうはずと思った福永さんは、売りアパート情報を求めて地元の不動産屋を回るうちに、高利回り物件を紹介された。その後も、基本は足を使うこと。空室があれば近隣の不動産業者を訪ね、自ら客付けのお願いをして回った。外壁にペンキを塗ったり、洗面台を買って取り付けたりといったセルフリフォームもお手のものだ。そのかいあって、購入後の入居率は100%に近い。

 実は、過去には痛い思いをしたこともある。

ある時、信頼するスポーツ関係者から投資話を持ちかけられて大金を預けたが、そのまま戻らなかったのだ。あとになって、多くのスポーツ選手が被害にあったことを知った。学生時代からスポーツ一辺倒でお金に関する知識がなく、それでいて小金を持っているアスリートたちは、詐欺師に狙われやすいのだという。

 そんな福永さんの現在の夢は、「現役時代から温めていた、スポーツを通して子どもたちの人間力を高める取り組みを形にすること。また、知識不足で引退後に苦労するスポーツ選手たちのサポートもしていきたい。僕でよかったら、いつでも相談に乗りますよ」。

 外国人選手の影響を受けて不動産投資を始めたのが、9年前。毎月の家賃収入を味方に、引退後の福永さんが新たなステージで夢を形にする日は近そうだ!

元三洋電機ラグビー部主将
福永昇三さん
1975年生まれ。身長190㎝、体重100㎏。東洋大学卒業後、三洋電機ワイルドナイツで活躍。2008年、2009年にリーグ2連覇を達成後、現役を引退。元U23日本代表。

福永さんの所有物件DATA

[区分所有]
神奈川県横浜市物件
購入年………2002年
構造……………RC造
間取り………2LDK
購入金額
2300万円
ローン2000万円
35年返済
表面利回り
8.2%

[1棟アパート]

群馬県太田市物件
購入年……………2005年
構造…………………鉄骨
間取り……………2DK×6戸
築年数……………20年
土地面積………343.0㎡
延床面積………238.48㎡
購入金額
2300万円
ローン2000万円
15年返済
表面利回り
15.6%

栃木県佐野市物件
購入年……………2006
構造…………………木造
間取り……………1DK×6戸
築年数……………22年
土地面積…………208.0㎡
延床面積…………175.744㎡
購入金額
1100万円
ローン1000万円
7年返済
表面利回り
23.4%

[不動産投資への遍歴]

■岐阜県立関商工高校で3年連続全国大会出場
■東洋大学の4年時にキャプテンとして関東大学2部リーグ優勝
■社会人ラグビーの名門・三洋電機に入社

2001年
プロ契約し、三洋電機ワイルドナイツの初代キャプテンとなる

2002年
試合中の大ケガで入院中に『金持ち父さん貧乏父さん』に出会い、退院したその日に横浜の区分マンションを購入!

不動産投資のスタート

2005年
群馬県太田市に中古アパート1棟を購入。表面利回り 15・6%

2006年
栃木県佐野市に中古アパート1棟を購入。表面利回り23・4%
日本ラグビー選手権にて、2連覇達成

2009年3月
三洋電機を退社し、現役を引退

2010年11月現在
1棟アパート2棟、区分マンション1部屋 計13 部屋を保有。利回りは、平均10%以上

(ダイヤモンドZAi2011年2月号に掲載)

取材・文/加藤浩子

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