編集部独自に水質格付け
今年もいよいよ、海水浴シーズンがやってきた。しかし、去年に引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大は収まらないどころか、デルタ株などの影響で感染者数が再び急増している。
海上保安庁の調査(7月15日時点)によると、全国の海水浴場のうちオープンするのは6割にとどまるという。これは去年とほぼ同じ数字だ。
例年、環境省は、全国の海水浴場(川、湖沼の水浴場を含む。以下、海水浴場と表記する)の水質調査を取りまとめてきたが、今年も去年に引き続き、コロナ禍で水質調査結果の取り扱いが異なることなどを理由に中止となっている。
そこで、今回、ダイヤモンド編集部のデータ班は各都道府県にヒアリングしたデータ、または各都道府県が開示したデータを基にして、独自の水質ランキングを作成した。
*7月26日現在、編集部がデータを取得できた558カ所の海水浴場を対象としている(作成方法の詳細は、ランキングの最後に付けた注を参照)。なお、東京都(21年は水質調査を実施せず)、奈良県、徳島県(21年は開設する海水浴場無し)、香川県(開設する海水浴場無し)、沖縄県は非開示である。千葉県、神奈川県は7月26日までに回答が無かった。
水質の判定基準は四つあり、水の汚れを示す化学的酸素要求量(COD、mg/リットル)、糞(ふん)便性大腸菌群数、透明度、油膜の有無で、適(AA、A)、可(B、C)、不適の5種類で格付けされている。
今回紹介する「水がきれいな海水浴場ランキング」の対象は、水質格付けが最高位の「AA」の海水浴場で、水の汚れを示すCODが低い(=きれいな)順に海水浴場をランキングした。
前述の通り、ランキングの中には一部、川、湖沼の水浴場も含まれている。
7カ所もランクイン
CODが0.500mg/リットル未満で、全国で最も水質がきれいな海水浴場に選ばれたのは7カ所あり、全て静岡県の沼津市だった。御浜、大瀬、島郷、千本浜、井田、平沢(らららサンビーチ)、三津だ。
井田は昨年も1位を記録していて、砂浜がなくゴロゴロした石とコンクリートの斜面のエリアで泳ぐようになっている人気の海水浴場だ。「井田ブルー」とも呼ばれるほどの美しい海で、ダイバーもよく訪れる。
御浜は、伊豆半島ジオパーク内の御浜岬の内海に位置し、浅瀬でもたくさんの色鮮やかな魚を見ることができる。例年は海上遊具なども設置されて、利用者の多い海水浴場だが、今年は遊具設置がないので注意してほしい。
大瀬は、周辺の海に約700種類の海中生物が生息し、井田と同様、ダイビングスポットとして有名だ。また、三津は、近隣の人が主に利用するようなこぢんまりとした海水浴場である。
なお、島郷、千本浜、平沢は、今年はコロナの影響で開設されておらず、ライフセーバーもいないので、海には入らないように注意してほしい。
なぜ、沼津市の海ばかりランクインするのか。
なお、昨年の1位には沖縄県宮古島市の前浜ビーチも入っていた。しかし、今年は残念ながら沖縄が新型コロナウイルスの影響で海開きができず、そもそもデータが非開示のためにランキングの対象から外れている。
この1年で水質が急上昇したスポットは?毎年常連、ベスト10に入った湖
静岡県沼津市の七つの海水浴場に次ぐ第8位は、三重県紀北町の城ノ浜だった。昨年はCOD1.033mg/リットルで46位だったが、今年はCOD 0.5mg/リットルで、一気にランクアップした。波静かな内海にある穏やかな海水浴場だ。
三重県の大気・水環境課の担当者は、「今年は梅雨入りが早く(調査実施に近い)5月中旬だったため、川の水が海に入り込み、三重県全体としては例年より水質が下がった。しかし、城ノ浜は地形的にそういった影響を受けにくかったのかもしれない」と話した。
9位の田沢湖(秋田県仙北市、CODは0.600mg/リットル)は、「水がきれいな海水浴場ランキング」ベスト10の常連。今回もベスト10に、唯一の湖沼としてランクインした。田沢湖はほぼ円形のカルデラ湖で、最大水深が423.4mと日本で最も深い湖だ。
基本的には、海流で水が入れ替わる離島周辺や、人口が少なく生活排水などが混ざりにくい場所にある海がきれいな水質を保てるが、田沢湖はその深さゆえに水質が良いようだ。
同率で9位にランクインしているのは、他に4カ所。福島県いわき市の薄磯と勿来、三重県志摩市の大矢浜、山口県萩市の湊だ。ただし、福島県いわき市の海水浴場の開設は全て中止となっている。
冒頭でも記したように、今年も去年に引き続き、全国で約4割の海水浴場が開設中止となっている。今後の新型コロナウイルスの感染状況次第では、途中で閉鎖されることもあり得るかもしれない。開設されていない海水浴場は遊泳ネットが未配置のため、きちんと開設されている海水浴場と比べてサメなどの危険生物と遭遇する可能性が高まる。また、遊泳区域を示すブイもなく、ライフセーバーや監視員もいないので、泳ぐのは非常に危険だ。
また、海水浴場は野外なので室内より新型コロナウイルスに感染するリスクは低いとされるが、人が集まった砂浜や、周辺施設で感染する可能性も考慮する必要がある。開設されている海水浴場に遊びに行く場合は、十分に注意してほしい。
(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)