『週刊ダイヤモンド』2月19日号の第1特集は「伝わる文章術 仕事で成功!『書く力』講座」です。メール、プレゼン、英文、チャット…。
「仕事ができない」の烙印が…
仕事で企画書が通らない。日報や報告書にダメ出しを食らう。メールやチャットでメッセージの意味を聞き返される。プレゼンテーションがうまくいかない――。なぜなのか…。
そんな文章絡みの仕事の悩みを抱えている人は多いはず。特に最近は、リモートワークの浸透によってテキストコミュニケーションの重要性が急拡大しています。
そこで今回は、達人たちから伝授してもらった数々の文章術の中から、二つの極意を紹介します。
「一文は短くシンプルに」。それが一つ目の極意です。
…この「一文」は句読点や記号を含めて200字強もあります。極端に長い文章にしましたが、やっぱり読みにくいですよね。
そこで田口氏の「一文60字以内・1メッセージ」のアドバイスに従って書き直してみましょう。こんな感じでしょうか。
先ほどの極端な長文と比べると、かなり読みやすくなったのではないかと思います。
仕事上のコミュニケーションでは、読み手を考え込ませるような文章は嫌われます。1日に何十通もメッセージをやりとりするメールやチャットで先ほどのような「超長文の一文」を送ってしまったら…。「何を言っているかよく分からない人=仕事ができない人」という烙印を押されてしまうでしょう。
企画書や報告書では、メールやチャットよりもまとまった文章を書く必要があります。ただ、その場合もやることは同じです。
「一文を短くシンプルに」は、誰でも今すぐ「書く力」をアップできる文章術です。意識したことがない人は、ぜひ今日から実践してみてください。
自分が伝えたいことだけではなく「相手が知りたいこと」を書く
達人たちが伝授してくれた中で今回お伝えするもう一つの文章術が「読み手を思う」です。
例えば他部署や他社の人に、自分の部署や社内でしか通用しない用語・略語を使った文章を書いていないでしょうか?「これくらいのことは知っていて当然だろう」という前提で、言葉足らずなメールやチャットを打っていないでしょうか?
読み手が何をどこまで理解しているのか、どういう言葉遣いでどんな情報を書けば適切か――。このような「読み手を思う」プロセスが欠けると、「伝わらない文章を書く、仕事ができない人」と相手に思われてしまいます。
これはプレゼンテーションや商談の提案書、社内の報告書でも同じことがいえます。そこで参考になるのがコンサルタントの文章術です。
アクセンチュアでマネジング・ディレクターを務めた後、経営コンサルとして独立した中野豊明氏の教えをご紹介します。
「ビジネスパーソンが書く文章は、自分が伝えたいことだけではなく、『相手が知りたいこと』が書かれている必要がある」。
ペルソナとは、商品・サービスの典型的なユーザーである架空の人物像のことです。ユーザーの性別や年齢、家族構成、年収、趣味、職務上の立場などさまざまな属性を設定。そのペルソナに向けてマーケティングを行います。プレゼンの資料や商談の提案書を書く前に、これと同じことをして「相手が知りたいこと」に想像を巡らせるわけです。
相手がどんな課題を持っていて、自分は何を望まれているのか――。他人の頭の中をのぞくことはできませんが、「相手を思う」ことでその答えに近づくことができます。そして、その思考を経て書かれたものは「伝わる文章」になるのです。
メールやチャットであれば、メッセージを打つたびにペルソナの設定までしなくていいでしょう。ただ、相手の頭の中がどうなっているのかに少しでも思いを巡らせるだけで、一気に伝わる文章が書けるようになるはずです。