平均年収は878.5万円
一般市民に身近な存在で、何かとニュースになることも多い鉄道。そんな鉄道会社に勤めている従業員の年収はどれくらいなのか。
対象期間は、2020年4月期~21年3月期。従業員数は単体ベースで、上場している鉄道会社25社が対象である。
それでは、ランキングを見ていこう。
1位は相鉄ホールディングス(HD)で、平均年収は878.5万円。同社は神奈川県にある相模鉄道を中心にグループ32社を統括する純粋持ち株会社で、単体従業員数は89人。運輸・流通・不動産・ホテル業などを営む相鉄グループ全体の従業員数は、約1万人になる。
その歴史を振り返ると1917年12月、相模鉄道が茅ケ崎を起点に厚木を経て橋本までの33.3キロメートルの鉄道を建設。一方、同年同月に創立された神中鉄道が厚木から横浜に至る鉄道を建設。両社は厚木駅で連絡していた。
転機となったのは43年、相模鉄道が神中鉄道を吸収合併し、貨物線を含め61.8キロメートルの営業キロを持つ鉄道会社に成長した。ところがその翌年、茅ケ崎~橋本間と寒川~四之宮間35.3キロメートルが運輸通信省(当時)に買収されてしまう。
戦後は経営の多角化と横浜駅周辺開発を推し進め、76年にはいずみ野線(二俣川~いずみ野間)を開業。その後も沿線開発に力を入れ、90年に大手民鉄に仲間入りした。
2019年11月には相鉄・JR直通線が開業し、東京都心部と直結するように。また、23年3月には、東急線との相互直通運転の開始を予定している。
2位は阪急阪神HD平均年収は864.4万円
2位は阪急阪神HDで、平均年収は864.4万円。同社は阪急電鉄と阪神電気鉄道、阪急阪神不動産、阪急交通社(旅行会社)、阪急阪神エクスプレス(国際物流)を中核会社とする純粋持ち株会社で、単体従業員数は187人。グループ全体の従業員数は2万3000人超になる。
阪急電鉄は言わずと知れた「関西私鉄の雄」であり、大阪梅田駅をターミナルに神戸線や宝塚線、京都線の合計143.6キロメートルの営業キロ、90駅を持つ。阪神電鉄は大阪梅田駅や大阪難波駅、神戸三宮駅などが主要駅で48.9キロメートルの営業キロ、51駅。
阪急が阪神を経営統合して同社が誕生した2006年以降、鉄道から不動産、流通、宝塚歌劇団や阪神タイガースも抱える巨大グループは順調に成長してきた。しかし、コロナ禍による外出自粛の影響は大きく、21年3月期のグループ売上高は5689億円、営業利益21億円に落ち込んだ。
22年3月期は売上高7462億円、営業利益392億円にまで回復したものの、まだ道半ば。同社は中期経営計画において、「コロナ禍をきっかけにさまざまな社会変化が加速している」と認識。競争力を維持・発展するため「沿線の魅力をさらに磨き上げていく」という。
具体的には、梅田駅周辺の開発や千里中央地区の再整備、なにわ筋連絡線(大阪市北区の新駅~同市淀川区の十三駅)や新大阪連絡線(十三駅~新大阪駅)の開業計画を筆頭に複数のプロジェクトを推進することで、31年3月期の営業利益1300億円以上を目標にしている。
4位は東急平均年収は762.7万円
3位は西武HDで、平均年収は802.2万円。同社は鉄道事業(東京都~埼玉県)の他に、全国展開するプリンスホテル事業でも知られる。また、20年に閉園した遊園地「としまえん」の跡地に、映画「ハリー・ポッター」のテーマパークを23年にオープンする予定だ。
4位は東急で、平均年収は762.7万円。傘下の東急電鉄は、西の阪急と双璧を成す私鉄の雄であるが、平均年収では100万円以上の大差がついた。ただし、阪急阪神HDの単体従業員数は187人、東急は同1461人で大きく異なる。
同社も事業分野が多岐にわたる中、鉄道の輸送人員が21%減少(22年度予想。対19年度比)するなど、コロナ禍のダメージを大きく受けている。
5位は京阪HDで、平均年収は740.7万円。中核事業会社の京阪電気鉄道は、京都・大阪・滋賀の3府県に91.1キロメートルの営業キロ、89駅を持つ。同社の直近の業績(22年3月期)では、鉄道の定期外収入が対平年度比33%減、定期収入が同18%減。コロナ禍になる前はインバウンド(訪日観光)の恩恵を受けていただけに、そのダメージも大きかった。しかし、23年3月期末にはインバウンド需要が戻る兆しがあるという。
さて、トップ5に、JR東日本・東海・西日本・九州のJR各社がいずれもランクインしていないことにお気づきだろうか。ランキング完全版では、6位以下を含めた全25社を明らかにするので、ぜひチェックしてほしい。
(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)