水質汚染度合いを見てみよう
夏といえば、海水浴の季節。ダイヤモンド・オンラインでは、7月29日配信の『水がきれいな海水浴場ランキング2022』を皮切りに、日本全国の海水浴場(川、湖沼の水浴場を含む。
環境省はコロナ禍の影響で、例年行ってきた全国の海水浴場の水質調査を2020年に中止していたが今回、3年ぶりに調査を再開。そのデータを基に、ダイヤモンド編集部がランキングを作成した。
まずは一つめのランキングの指標となる「ふん便性大腸菌群数」について、詳しく説明する。
大腸菌は、ヒトや動物のふん便由来のもの以外に、土壌や植物などから来るものもある。より的確にふん便汚染を把握することができるのが、ふん便性大腸菌群数の調査になる。
環境省の水質格付けで、最高位の「AA」を獲得するには、複数回測定した平均値で100ml当たり2個未満のハードルをクリアしなければならない。同様に「A」は100個以下、「B」は400個以下、「C」は1000個以下、「不適」は1000個超となっている。
なお、同省はAAとAを「適」、BとCを「可」と位置付けている。
ダイヤモンド編集部による「ふん便性大腸菌」が多い海水浴場ランキングでは、水質格付けが「A~C」の海水浴場のうち、ふん便性大腸菌群数(個/100ml)の平均値が10個以上を対象とした。該当した海水浴場は80カ所。
なお、ランキングには一部、川や湖沼の水浴場も含まれている。長野県や奈良県といった海のない自治体に住む方もぜひチェックしてみてほしい。
「ふん便性大腸菌」が多い海水浴場ランキング1位となったのは、千葉県横芝光町にある屋形だった。ふん便性大腸菌群数は370個/100ml。水質格付けは「B」となっている。
屋形は、太平洋に面した九十九里浜のほぼ中央に位置する海水浴場。都内から車で2時間弱と、都心からのアクセスも良好だ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って20~21年は開設を見送っており、今年は3年ぶりの開設となるが、残念ながらふん便性大腸菌群数では全国ワーストとなってしまった。
ランキング上位を見ると、屋形のほか、3位の内浦(千葉県鴨川市、ふん便性大腸菌群数270個/100ml)など、千葉県の海水浴場がワースト10のうち6カ所と過半数を占めている。
千葉県の水質調査担当者は、個別の要因は把握していないとした上で、「(県内海水浴場における調査結果の)全体的な傾向として、前日に雨が降るなど採水時の天候条件が悪かった。そうした天候の影響が大きかったのではないかと考えている。
3年前に当たる19年の調査時のデータを見てみると、屋形は平均26個/100ml、内浦は平均20個/100mlとなっていた。これと比べると、確かに今回の調査では大きく数値が跳ね上がっていていることが分かる。
そのほか、ワースト10には奈良県が2カ所(いずれも川の水浴場)、新潟県と愛知県から1カ所ずつランクインした。
透明度「1m未満」は16カ所北海道がワースト3を独占
続いて、今回のランキングで二つ目の基準となる「透明度」について見ていこう。透明度については、直径30cmの白い円盤を海中に沈めていき、見えなくなる距離を測定する。
「透明度」のランキングでは、透明度1m未満だった海水浴場16カ所を対象とし、透明度(m)が低い順に並べた。
1位となったのは北海道羽幌町のはぼろサンセットビーチで、透明度は0.5m。リゾート気分を演出するためヤシの木の形をした照明を設置しており、きれいな夕日が眺められるのを売りにしているビーチだ。
2位は同率の0.6mで、望来浜中央と遠別町富士見だった。これら2カ所も1位のはぼろサンセットビーチと同じく、北海道の海水浴場だ。透明度のランキングでは、北海道がワースト3を独占する結果となった。
北海道の担当者は、これらの海水浴場で透明度が低かった要因について、「いずれも風と波が強い日に計測したので、砂が巻き上げられてしまったことが、透明度が低く出た要因ではないか。また、望来浜中央と遠別町富士見に関しては河口付近に位置しており、計測した5月の時期には雪解け水が川から流れ込んだ影響もあると考えられる」とコメントした。
今回の2つのランキングで紹介した海水浴場は全て、環境省の基準で水浴利用に問題ない水準を満たしている。一方で、「ふん便性大腸菌群数」や「透明度」といった水質を判定する項目に着目すると、細かな差が見えてくる。
コロナ禍3年目を迎えた今年は、昨年より多くの海水浴場がオープンする予定だ。海上保安庁によると、6月30日時点で全国の海水浴場の約8割が開設予定だという。
一方で、新型コロナウイルス「第7波」の状況も深刻だ。7月23日には、国内の新規感染者数が初めて20万人を超え、過去最多を更新した。
感染拡大に歯止めがかからない中、開設された海水浴場に行く場合でも、密を避けるなど対策を徹底することが必要になる。加えて、猛暑の中での熱中症にも十分に注意してほしい。
(ダイヤモンド編集部 笠原里穂)