『週刊ダイヤモンド』12月17日号の第1特集は「最強学閥 慶應三田会 人脈・金・序列」です。慶應義塾のOB組織である「三田会」。
慶應と日本IBMをつなぐキーマン
日本IBM 慶応大学へ1億2000万円の“寄付講座”寄付――。
今から30年以上前の「週刊ダイヤモンド」1988年8月27日号には、そんな見出しの記事が掲載されている。
日本IBMが慶應義塾大学の理工学部創立50周年記念に寄付講座の費用として1億2000万円を寄付したというものだ。
「純民間企業から多額の寄付を“寄付講座”に贈呈されたのは初めてだと思う」という慶應義塾大学のコメントも掲載されている。
毎年、数多くの企業が慶應義塾の寄付講座の開設費用として寄付をしている。特に経済学部や商学部といった学部で多くの寄付講座が開設されている。
ただし、一般的な寄付額の相場は年間で500万円ほどだ。いかに当時の日本IBMの寄付額が大きかったかが想像できるだろう。
なぜ日本IBMはそこまで巨額の寄付を実行したのだろうか。
創立150周年事業で発揮された集金力
それが当時日本IBMの社長だった椎名武雄氏である。椎名氏は経団連や経済同友会といった財界の要職に就き、日本における外資系企業の“地位”を向上させたことから「ミスター外資」との異名も取る。
実は、その椎名氏は慶應の工学部(現理工学部)の出身なのだ。椎名氏は慶應義塾の「最高幹部」評議員も長く務めた。椎名氏の日本IBMの後任社長の北城恪太郎氏も同じ慶應工学部出身。北城氏は現職の評議員で、椎名氏からバトンを譲り受けた形だ。
このエピソードが示すのが、産業界における強固な三田会人脈の存在である。もちろん人脈は、慶應の集金力にも直結する。
集金力で圧巻だったのが、2008年の創立150周年事業に関するものだ。SBIホールディングス社長(当時)の北尾吉孝氏は1億円、大正製薬ホールディングス社長の上原明氏は9300万円を寄付している。
個人だけではない。
慶應義塾の圧倒的な集金力の背景にあるのが、創設者、福澤諭吉による「社中」という思想である。現役学生や塾員(卒業生)、そして教職員ら慶應に関わる関係者の団結力の源泉である。
三菱や三井といった旧財閥と慶應は福澤諭吉を介し、深い縁で結ばれている。そうした歴史的な背景もあり、銀行や商社、不動産、メーカー…各業界で慶應は圧倒的なネットワークを築いているのだ。