『週刊ダイヤモンド』1月6日・13日号の第1特集は「2024年決定版 インフレに勝つ!マンション売買・管理」です。いまマンションを売るにも買うにも管理するにも、大きな影響を与えているのがインフレです。
回されるマンションが両方存在するカオス市場
三田ガーデンヒルズ。東京メトロ麻布十番駅近くで三井不動産グループと三菱地所グループが建設中の総戸数1002戸のマンションだ。
2023年、都内の新築マンションの平均販売価格が初めて1億円を超えることになった理由をつくった「主犯」だ。2月から発売したその住戸の販売価格は「平均」3億円。だが、すでに全住戸の半分程度が販売された。
ちなみに平均価格1億円超えには「共犯」がいる。浜松町の世界貿易センタービルディング跡地で鹿島、三井不動産、三菱地所、東京建物などが販売中のワールドタワーレジデンスという389戸のタワマンだ。
一方で、同じ都内のマンションモデルルームで全く違う光景も見られる。100戸以上のマンションなのに、1期当たりの販売戸数が1桁しかなく、早々にモデルルームも閉鎖されてしまうといったものだ。来客が全くないためだ。
「郊外物件で、総戸数と期分け分譲された戸数の合計が合わない物件が多く出てきている。売れない物件は二次卸に回されて中古マーケットに直接流れ込んでいるのではないか」と井出武・東京カンテイ上席主任研究員は言う。これまではマンション立地としても人気だった、立川や八王子などの国分寺以西の郊外や、世田谷・杉並区などの住宅地でもこうした現象が見られるようになっているという。
超高額物件と苦戦物件が入り交じり、平均値を見るだけでは何が起きているか全く分からない。二極化が今マンション市場を「カオス」にしている。
二極化は管理でも進む。新築物件で、住民は管理を丸投げできる第三者管理方式が普及しつつある一方で、委託していた管理会社から契約を切られ、後継会社が見つからずに自主管理を迫られるところもあるという。
一方、マンション管理業界にもインフレの波が押し寄せている。清掃や警備などの日常管理に関わる人件費の高騰に、電気代の値上げやマンション保険の保険料の高騰――。これらを受けて、マンション管理会社が管理組合への管理委託費を軒並み増額要求しているのだ。さらに、組合が積み立てる修繕積立金についても、建設費の高騰により計画を見直さなければならないところが増えているのだ。