『週刊ダイヤモンド』9月14日・21日合併号の第1特集は「後悔しない歯医者選び」です。歯科医師ですら実は難しい受診先選びに患者が成功する鍵は何なのか。

ステージが転換する歯科医療の最新事情を詳らかにすると共に、「頼れる歯科医師」か「ダメな歯科医師」かの見極め方、歯学部受験の狙い目に迫ります。(ダイヤモンド編集部 臼井真粧美、野村聖子、竹田孝洋)

人気歯科医院の患者が
治療の失敗で駆け込んでくる

「近くにある歯科医院の腕が悪くてね、治療で失敗した患者がうちに駆け込んでくるんだよ」。開業して長年続けてきたベテラン歯科医師は恨めしそうにこぼす。

 インプラントでは通常、人工歯根を埋め込んだ後、骨が結合するのを数カ月待つ。それから仮歯をかぶせる。

 治療期間を短縮する手法では、埋入と同時に仮歯を入れ、手術当日からかめるようにする。

 この手法は患者に手軽さを感じさせる。しかし、施術のレベルは真逆で、手術可能な歯に一定の条件がある。経験と技術のある熟練者だからやれることだ。

 日本口腔インプラント学会は治療指針の中で「患者の負担を軽減し、患者の期待に早期に応えることができるという大きなメリットがある反面、インプラント治療の失敗というリスクを背負うことにもなりかねない。したがって、期待する結果を得るためには、ある程度のリスクを伴うことをあらかじめ患者に伝えておく必要がある」と言及している。

 この手法は治療コストも抑えられることから、患者集めにはもってこいだ。

だから他の歯科医院と差別化するため、未熟な腕にもかかわらず手を出す歯科医師がいる。

急拡大した大手歯科医院の破綻
歯科医院のM&A活発化が表面化

 リテラシーを磨く対象は、治療周りだけではない。歯科医師や歯科医院の実態までもアップデートできているかも重要だ。

 かねて歯科医師が過剰で稼げない不人気職種の扱いになっているが、これから歯科医師は「減少時代」、歯科医院は「大閉院時代」に突入していく。歯科医療のステージが転換する中で、急拡大した大手歯科医院の破綻、歯科医院のM&A活発化などが表面化する。

 患者としては、前払いしたカネを破綻によって失いかねない医院や、高値で買い手が付くような地力のある医院などを見極める目も持ちたい。

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