だが、ここはカフェではない。今年4月5日に開店したばかりのファミリーカー専門の中古車販売店「SNAP HOUSE(スナップハウス)東川口店」でのひとコマなのだ。
広々とした店内にはテーブル席やソファーが複数設けられ、2時間300円の利用料を払えば、コーヒーやフレーバーティー、ジュースが飲み放題。
同店は中古車買取・販売のガリバーインターナショナルが運営。屋外展示場も含め国内外の異なるメーカーの中古ファミリーカーを常時20台程度展示する。
だが、店舗開発責任者の折下恵太郎ストアマネージャーはこう言う。「ファミリー層では、子どもの送迎や買物などでママが運転する機会が圧倒的に多く、いわばママがメインユーザー。
当店はそんなママたちと接点を作るのが狙い。だからママ会だけ、ちょっとお茶を飲むだけの利用も大歓迎。将来的にクルマを買うとなったときに『そういえば、いつもママ会をやっているSNAP HOUSEって、クルマも売っていたっけ』と購入先の候補になれば、それでいい」。
背景には、消費増税後の中古車販売の低迷を懸念し、新しい顧客層を開拓しなければならないという危機感がある。同店では今後子ども向けの知育系イベントなどを定期的に開催し、よりママの集客に力を入れていく予定。
シニア層を狙ったメニューを提供
モスフードサービスも消費増税がスタートした4月1日から、モスバーガーの開店時間を早め、全店午前7時から営業する新施策を始めた。“朝モス”の狙いは、朝活するビジネスマンもさることながら、シニア層を新たに囲い込むこと。モスバーガー独自のご飯を使った「ライスバーガー」は、シニア層に根強いファンがいる。そのシニア層の顧客化に本腰を入れ始めたわけだ。
朝限定メニューとして、鮭を具材としたライスバーガーと具だくさんの豚汁、つぼ漬けをセットにした「モスの朝ライスバーガー朝御膳『鮭』」も新発売した。
ディスカウントストアのドン・キホーテも、消費増税を機に、新たな顧客層の開拓に力を入れる。1つは外国人観光客。都心の繁華街にある六本木店、渋谷店、新宿東口店では、従来から中国語、韓国語のPOPなどによって、来店頻度が高い中国人、韓国人への対応を強化してきたが、最近は東南アジアからの観光客が急増。
主婦やファミリーの来店増を狙う
もう1つは、主婦層、ファミリー層だ。そのために、売場面積が3000~5000m2のの「「NEW MEGAドン・キホーテ」という店舗形態の出店を加速させ、2014年4月現在24店舗を数える。「ドン・キホーテ」の店舗は1000~1500m2の売り場にところ狭しと商品が陳列され、細い通路はすれ違うのが困難なほどだ。しかし、「NEW MEGAドン・キホーテ」は広い通路を確保し、ゆとりのある陳列。主婦やファミリーがカートを押しながら、ゆっくりと買物を楽しめる。
増税前の3月18日には独自の電子マネー「majica(マジカ)」も始めた。予め、現金をカードにチャージする方式の電子マネーで、ドンキホーテグループ全店で利用できるものだが、チャージ時のポイントの付与、会員価格での購入のほか、1000円以上買うと最大9円値引きされるなど、様々な特典がある。
「ポイントや値引きなど、得をすることに敏感な主婦を中心に、当初の計画より急ピッチで会員数が増えている。新たな顧客である主婦層の取り込みに一役買っている」(後藤室長)
増税後、消費者の争奪戦は激しくなることが予想される。新たな顧客を獲得するために、いかに思い切った策を講じられるかが、カギを握りそうだ。