アベノミクス第3の矢である成長戦略の新しい柱として、女性活躍の推進に注目が集まっている。女性閣僚5人のうち、早くも2人が辞任するなどアクシデントはあるものの、政府の具体的政策もが明らかになってきた。

 最近打ち出された女性活躍推進の政策は、産業界も巻き込み、家庭にいる女性を、社会・職場に引っ張り出すために注力していることがうかがえる。いずれもワークライフバランス策や適切な研修や評価など、ワーキングマザーにとってのブラック企業化を防ぐ効果が期待できるので応援したい。しかし一連の対策からは、一番ブラック化を防がなければいけない対策が抜け落ちている。それは、日本の家庭対策(ダンナ対策)だ。

夫への愛情曲線が急落するわけ

 先日も、幼児を抱えるワーキングマザー数名と話をしていたところ、ダンナの家事育児の参加の仕方があまりに無責任である、と彼らへの怒りで話が盛り上がった。一説によると妻の夫への愛情曲線は、結婚前が一番高く、第一子出産から2~3年ほどで急落、場合によってはマイナスになるそうだが、その理由は家事子育てへの傍観者的な態度や考え方だという。

 身の周りでも、「子育ては共同責任だから、平等に家事育児をシェアしよう」という殊勝なダンナはほぼ皆無。男性側はそう自己申告しても妻に裏をとると自己満足にすぎないことが多い。「父親」というステータスの男性のうち、朝の出勤時に子どもが赤い顔して「頭が痛い~」と起きてきて、どきっとした経験がある「父親」はどのくらいいるだろうか?

 ワーキングマザーの場合、朝、子どもの様子が「おかしい」と分かった瞬間、子どもの熱を測り食欲の有無を尋ねながら、頭の中では医者に連れて行くべきか、その後軽かったら保育園に預けられるか?会社は1時間遅刻すれば大丈夫か?朝イチの会議はどうする?で、もし登園できなければ一日休むか、あるいは午前半休して午後は実家の母に応援を頼むか?休む場合の仕事の段取りはどうする?来客はキャンセルを入れないと、などなどが30秒間ほどで頭をよぎりながらも、子どもを着替えさせ、食事を用意する。

 多くの父親たちのどれくらいが、こういう緊張の朝を経験してきたのだろうか?子どもの異変に気がついたとしても「熱っぽいから医者に連れて行けば?」と言うくらいが関の山ではないか。子育ては基本、妻の責任だが、大変そうだから協力してあげる、という発想の男性があまりに多い。それを妻は怒っている。

極端に短い夫の家事時間

 なお、男性の家庭へのコミットレベルの低さは意識だけの問題ではない。総務省の「平成23年社会生活基本調査 生活時間に関する結果」によると、子どもがいる共働きの夫の家事関連時間は僅か39分、片働き(夫のみ就業)の夫は46分。夫の労働時間は共働き8時間30分、片働き8時間22分である。

 しかしこれでも男性の家事関連時間は増えているらしい。昭和61(1986)年から平成23(2011)年までの25年間で共働きの夫の場合15分から39分へ。片働きは17分から46分へ。報告書ではこれをポジティブな成果としている。

 1日40分前後で子育て・家事の何をやっていると胸を張れるのか理解に苦しむ。ちなみに妻の家事関連時間は、共働きで4時間53分、専業主婦が7時間43分で、共働きの妻の労働時間は4時間34分である。共働きの場合、家事の分担は妻88%、夫12%である。このような状況でどうやって妻が外に出て働けというのだろうか?夫が1割しか家事をしない家庭で妻を外に働きに引っ張り出したら、その家庭は妻にとってブラック企業以外の何ものでもない。

 そもそも家庭とは、夫婦が協力して経済的に自立しつつ衣食住を賄う営みであり、その中で子育てというビッグプロジェクトや、家や車を買うなどの経済的プロジェクトも行ういわば「企業体」である。

家庭外(社会)で女性の力を発揮してもらいたいのであれば、企業のブラック化を防ぐと同時に、家庭というブラックホール的な企業体のホワイト化を進めるのが不可欠ではないか。

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